NAGASE CUP 2023 特別企画 新豊洲 Brillia ランニングスタジアムイベント 開催

NAGASE CUP 2023 特別企画
新豊洲 Brillia ランニングスタジアムイベント 開催

2023.08.23

Report

新豊洲Brilliaランニングスタジアムイベントに小学生22名が参加
「ずっとびりだったけど、ちょっと速くなった」

SPECIAL RUN FES開催!新豊洲Brilliaランニングスタジアムに小学生22名が集合 「ずっとびりだったけど、ちょっと速くなった」

SPECIAL RUN FESは7月16日、東京・豊洲にある新豊洲Brilliaランニングスタジアムで開催された。

新豊洲Brilliaランニングスタジアムは、全天候型60m陸上競技トラックとパラアスリートを支援する「義足の図書館」が併設された、世界で初めてのユニークな施設。「テクノロジーとコミュニティの力で、誰もが分け隔てなく自分を表現することを楽しんでいる風景を作る」がコンセプト。館長を務める為末大さんは「2020年以降に残す最も大事なレガシーは、障害のあるなしや、年齢、性別に関係なく、すべての人がスポーツやアートを楽しんでいる風景なのではないでしょうか。そういった我々の思いに共感していただいた人々が集まり、今回、新豊洲Brilliaランニングスタジアムが完成しました。本当の意味でのバリアフリーが実現される未来をほんの少しだけ先取りして、その風景をこれから新豊洲に作っていきたいと思います」とそのホームページにコメントを寄せている。

※現行の新豊洲Brilliaランニングスタジアムは2023年11月30日をもって営業を終了。24年10月に「有明アーバンスポーツパーク」に移設され、再スタートを切る予定だ。

そのレガシーあふれる会場において、今回は小学生を対象にランニング・クリニックが開催された。小学校3年生から6年生として参加募集を行い、当日の参加者は3、4年生がメインとなった。

新豊洲 Brillia ランニングスタジアムイベント

ときは梅雨明け間近の7月中旬、スタート時間の14時には外気温が絶好調ながら元気な児童が三々五々集結。予定通りプログアムはスタートした。

本イベントでは、全日本実業団駅伝などにも出場する陸上競技部のメンバーと、現役パラアスリートをゲストに迎えている。 前者は創部70周年を誇る伝統を持ちつつ、マラソン五輪代表を決定するマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)に吉岡幸輝選手を送り込むなどの実績を有する中央発條株式会社・陸上競技部(以下「中央発條」)のメンバーだ。この日は、中央発條の佐藤雄治監督を始め、原嶋渓マネジャー、そして吉岡選手を含む10名が参加。 後者は、名古屋学院大学AC所属・義足のパラアスリートで東京2020大会の新種目「ユニバーサルリレー」の代表メンバーでもある大島健吾選手だ。大島選手は、パラアスリートとしての活動はもちろん、小学生などを対象にした講演活動も日頃積極的に取り組んでいる。 冒頭、まずは主催者である長瀬産業株式会社・広報室の長妻義之さんより挨拶。「勝てる自信あるひと〜?」との問いかけには児童の笑顔が浮かんだ。「これからすぐに勝てる練習をします!身体を動かし、走り方を学んで帰ってもらえればと思います」とこの日の目標を掲げた。

この日、東京の最高気温は35.3度。全天候型施設である会場には屋根があるものの、ほぼ屋外と変わらない。まずはこの暑さ対策のレクチャーからスタート。MGCへの出場が決まっているフルマラソンの吉岡選手から直々に「まずはスタート前からしっかり水分を補給します。喉が乾いたな…と思わなくとも、まずは水分補給から。スポーツドリンクも有効です」とアドバイスし、全員がまずは水分補給を開始。原嶋マネジャーからは「体内の深部体温の上昇を抑えるのに効果的」と、児童には「アイススラリー」が配布された。

こうしてまずはしっかりと水分補給が行き届いてから、児童たちは3つのグループに別れ、それぞれ3つずつプログラムを体験した。

ひとつは、義足体験。「義足を履いて歩く、走るを体験する」。

この体験の会場となったのは新豊洲Brilliaランニングスタジアム内に敷設された「義足の図書館」。それまで義足に触れたことのない児童にとって、様々な義足が陳列された図書館は実に興味深いものだったろう。ここでの講師はもちろん義足のパラアスリート大島選手。

大島選手はまずは生活用義足を披露。先端が普通の足同様、靴を履いた形状になっており、普段はこちらで生活を送ると説明。そして、次に競技用の義足について「電車に乗るにはバランスが悪いのですが、前に体重がかかるようになって、走りやすくなっています」と解説。またその後、コースに出たのちのウォーミングアップでは「(義足の調整は)数センチ変えたら走れなくなるくらい重要です。まずは、目を閉じて片足ずつででもバランスがとれるようにウォームアップします」と両目を閉じ、義足側、右足側とそれぞれでバランスを取りながらストレッチする様を披露した。

この後、児童たちは利き足とは逆の足に競技用義足を装着。そのまま付き添われてコースに出るものの、歩くのもままならない。しかし、ほとんどの児童が義足のまま、走る動作までたどり着いたようだ。

二つ目は「ランニングスキル・トレーニング」。

これは純粋には走るための機能向上プログラムで、スキップでトレーニングを重ねて行く。具体的にはノーマルのスキップから、上に飛ぶスキップ、前に飛ぶスキップ、速く細かいスキップ、遠くにスキップ…それぞれのスキップにより足の運びが異なる点を学ぶ。しかし、馬鹿にするなかれ、これが意外とキツい。これをコースで繰り返していると、運動不足のお父さん、お母さんは足がぷるぷると生まれたての子鹿のようになるのは必至だ。

体育の時間にただ「がんばれ」ではなく、走る動作がどのようなからくりにより成り立っているか学ぶ時間は、日頃の授業にもぜひ取り入れてほしいものだ。

三つ目は「コーディネーション・トレーニング」。

これは単純に走力に影響を与えるプログラムではなく、運動における認知能力を向上させる学習だ。

例えば、講師がじゃんけんでグー、チョキ、パーのいずれかを出す。児童たちはまずは、この講師を相手に「後出しジャンケン」で「勝つ」ことに専念。しかも、手ではなく足を使う。足を閉じればグー、足を左右に開けばパー、前後に開けばチョキ。「勝つ」分には普段から慣れているので、難易度は高くない。しかし、次に「後出しジャンケン」で「負け」を出そうと考えるとこれが意外に難しい。ジャンケンは普段、常に「勝とう」という意識のもとに勝負する。よって認知機能として自動的に常に「勝つ」を選択してしまいがち。これを瞬時の判断で「負け」の手を出さないと(この場合は「足」か) いかんという点に奥深さがある。ここで「そんなの簡単」と思った、そこのあなた! ぜひチャレンジしてほしい。

続いて地面にマーカーをおいて「ケンケンパ」。しかし、この「ケンケンパ」は地面に置かれたマーカーにより、両足、片足で飛ぶルールが変更となる。つまり置いてあるマーカーの数、位置をとっさに判断し、順番に飛んでいく。これが思った以上に難易度が高い。お手本を見せる選手でさえも時折、間違えたりするほどだ。

こうして走力としては直接関係ないものの、運動の上で判断に欠かせない認知能力のトレーニングを楽しみながら敢行できるメニューとなっていた。これは陸上よりもサッカー、バスケットボールなどのプレーの際に役立つという。

新豊洲 Brillia ランニングスタジアムイベント

クリニックはここまでで、最後はコースを使用し、児童と選手たちが競争する「真剣勝負」の企画だ。しかし選手たちは手を抜いてくれるものと思ったら大間違い。選手に負けじと歯を食いしばって走る児童たちは、残念ながらハンデをもらっても、誰も選手より速くゴールを切ることはできなかった。

大きな歓声が上がったのは、大島選手が義足を装着せず、右足のみで出走したときだ。これで、児童のみならず中央発條陸のメンバーよりも速くゴールしたのには度肝を抜かれた。これが世界を舞台にしたアスリートのレベルだと痛感させられた瞬間だった。

開会から約一時間、程よい疲労感と興奮で熱気が冷めやらない会場で、全プログラムが終了した。児童に感想を求めると「ずっとびりだったんですが、ちょっと速くなった気がします」と早くもトレーニングの成果を口にする子も。また「友達とやるのと、選手とやるのは気持ちも違って、いつもと違う体験ができてうれしいなと思った」と素直に喜ぶ子もいた。

ここで無事閉会…となるはずが、これで終わらぬのが元気いっぱいの子どもたちと負けず嫌いなアスリートたちだ。炎天下だというのに、「まだまだ走り足りない」という子どもたちは、大島選手を初めとするトップアスリートに再び勝負を挑み、これはコース撤収の時間ぎりぎりまで繰り広げられた。

アスリートも全力でこれに応える。笑いが絶えないなか、プログラムは幕を閉じた。こんなクリニックは、毎週行われたとしても楽しいに間違いない。

大島選手はクリニック後、スポーツを通じて伝えたいことについて「努力をしなきゃいけない……その経験を早い段階から知ってほしい。そして、ひとりでは強くなれないので、先生やコーチとのコミュニケーションも大事になってくるので、普段の立ち振る舞いよって、『いろいろ教えてあげたい』と思わせる素直な行動をとってほしいと思います」とコメントを寄せた。

また、中央発條の佐藤監督からは、「スポーツは楽しいもの。スポーツを通して、ワクワクして欲しい。僕たちはMGCやニューイヤー駅伝など、TVを通して皆さんをワクワクさせる走りをします。そしていつの日か、参加してくれた子供たちが僕たちをワクワクさせてくれる日を楽しみにしています」と小学生の将来に期待もにじませた。

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