東京世界陸上の余熱が残る聖地・国立競技場でNAGASEカップ2025を開催

東京世界陸上の余熱が残る聖地・国立競技場でNAGASEカップ2025を開催

2025.12.25

世界ワールドランキング(WRk)対象・世界パラ陸上競技連盟(WPA)公認の陸上競技大会「NAGASEカップ」が2025年11月23日(日)・24日(月・祝)に、東京・国立競技場で開かれた。年齢や国籍、障がいの有無などを問わずに参加できる、“誰でも参加できるインクルーシブな大会”で、今回が4回目の開催となる。トラックとフィールドの計44種目が行われ、男女3種目で世界新記録が誕生した。

会場は国立競技場。2021年東京オリンピック・パラリンピック[yh1] の会場だっただけでなく、25年9月には東京世界陸上でトップアスリートが世界最高峰の戦いを演じた場だ。当時の余韻がまだ残るスタジアムで、多種多様な選手たちが心技体の粋を尽くす。一帯にはダイバーシティを実現する光景が広がった。

第4回は過去最多の約1,700人の選手が出場。それぞれの目標に向かって競技に取り組み、3種目で世界記録が塗り替えられたほか、1種目でアジア新、6種目で日本新がマークされた。

女子T61の湯口英理菜(JAL)は100m、200mでともに記録を樹立した。初日の200mで35秒76の世界新をマークすると、最終日の100mでも17秒36とアジア記録を100分の6秒更新。ともに自身の記録を塗り替える快走だった。

男子800mではT63の2人が世界記録を上回った。この種目を始めて1週間余だという近藤元(積水化学)が2分39秒18をマークすると、同組のパラリンピアン・山本篤(チームもんごる)も2分41秒64。山本が持つ従来の世界記録2分44秒05を更新した。

男子やり投でII-2の亀山海(東京マスターズ)は30m33の世界新を記録。1投目の28m33で従来の世界記録23m98を大幅に上回ると、2投目でさらに記録を伸ばした。

男子1500mでT37の井草貴文(AC KITA)は4分19秒65の日本新をマーク。自らの記録を0秒14塗り替えた。

大会ゲストとして寺田明日香さん(11月23日)、桐生祥秀さん(11月24日)がそれぞれ来場。女子100mH元日本記録保持者の寺田さんは、持ち前の明朗快活な語り口で選手らにインタビュー。喜びや笑いに包まれるひとときを演出した。

24日に来場した桐生祥秀さんは男子100mで、2017年に「日本選手初の9秒台」(9秒98)を達成したレジェンド。大会出場者からひっきりなしに記念撮影を求められるなど、その人気ぶりが健在であることを示した。

特別協賛の長瀬産業株式会社・朝倉研二代表取締役会長は開会セレモニーで挨拶。「国立競技場で第4回を開催できることをうれしく思います。本当にありがとうございます」と、日本パラ陸上競技連盟(JPA)や東京陸上競技協会など関係各所に謝意を表明した。

そのうえで、「この大会は障がいの有無を問わず、年齢を問わず、国籍を問わず、誰もが参加できるインクルーシブな大会を標榜しております。参加者は毎年増えて、今年は約1700名。海外からの参加や小学1年生の参加もあります」と盛況ぶりを明かした。

その言葉通り、アジア・オセアニアなど海外のアスリートも積極的に参加した。女子のPEREIRA Veronica Shanti(シンガポール)は2種目制覇。100mで11秒81、400mは55秒57とし、ともに大会新を塗り替えて優勝した。

女子100mで同組のAULIA Dina(インドネシア)も、大会記録を0秒13上回る11秒89で2位。男子は100mでZOHRI Lalu Muhammad(インドネシア)が10秒32の大会新を記録した。インドネシアの4人(SETIAWAN Wahyu, JAELANI Fatah Sidik, KERTANEGARA Bayu, HADI Sudirman)は男子4×100mリレーでも40秒92の大会記録で制した。

オープン種目の小学生100mは全30組のタイムレースで236人が出場し、渡邊堅生(山形・天童中部小6年)が12秒80の大会新をマーク。2位以下を大きく引き離す好タイムで優勝を果たした。

大会新はこのほか4種目で記録された。1500mの女子はT20の岡野華子(AD損保)が4分47秒35とし、自身の記録を4秒19更新。2位の澤田陽南(リスRT)も4分49秒22で大会記録を上回った。男子もT20の戸田夏輝(NDソフト)が3分50秒72をマークした。

また、朝倉会長は挨拶で「インクルーシブな大会の裾野が広がっていけば」と願いを口にしつつ、今大会で設置している各種体験コーナーに言及。「義足や競技用の車いすを体験いただける企画をしております。時間の許す限り足を運んでいただければ」と呼びかけていた。

その体験ブースは盛況だった。義足体験は、両脚に義足を装備した状態で歩いたり走ったり。参加者からは「すごく跳ねる」などの感想が聞かれた。競技用の車いすを体験するコーナーでは、手袋をはめてホイールを力いっぱい回す。体験を終えた男性は「めっちゃ大変…!」と目を丸くしていた。

長瀬産業所属のブラインドランナー・和田伸也(T11)とガイドランナー・長谷部匠は男子800mに出場。主戦場とする長距離とは異なる中距離のレースにチャレンジし、2分12秒68の33位となった。

2人の役割はレース出場だけにとどまらない。大会のラストを飾ったオープン種目のファンリレー(混合4×100m)では、NAGASEグループの社員らがブラインド走者と伴走者の役をそれぞれ体験。それに先立ち、2人が走り方のコツなどをレクチャーした。

アイマスクを装着しつつ手に携えたロープで伴走者と繋がって走る、初めての試み。それぞれに入念な予行練習をしてからレース本番に臨んだ。練習中には「怖い!怖い!」と叫ぶブラインド走者もおり、視界が遮断された状態で走る難しさを体感していた。

2018年にブラインドランナーの和田を社員に迎えたNAGASEグループ。入社前後の活躍などを受けて社内での気運が高まり、「アスリートにチャレンジする機会を提供できないか」――とJPAと協議を重ねてきた。そして22年、NAGASEカップ初開催にこぎ着けた経緯がある。

第1回の開催地は東京・駒沢競技場。翌23年には東京オリンピック・パラリンピックが行われた国立競技場に場を移し、今年で第4回を迎えた。観覧無料で開放しており、両日で延べ約8,000人が来場。インクルーシブな空間と化した国立競技場で晩秋の休日を過ごした。

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