コラム【前編】盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎が直撃!パラ陸上・和田伸也の「超人タイム」とインクルーシブのリアル

障がいの有無や年齢、国籍などの垣根を越えてすべての人が共に競い合う、国内最大規模※1のインクルーシブな陸上競技大会「NAGASEカップ」。
今回ゲストとして参加するR-1グランプリ王者でお笑い芸人の濱田祐太郎さんが、パラ陸上界のレジェンド・和田伸也選手と、伴走者の長谷部匠選手(ともに長瀬産業所属)を直撃!
※1 障がいの有無に関わらずアスリートが参加できる大会において、パラ選手参加人数が最大級(長瀬産業調べ)
わざわざ「インクルーシブ」と言わなくていい社会が理想
濱田:インクルーシブな大会という取り組みはすごく良いと思うんですけど、あえて「障がいの有無や国籍の垣根を越えて」と声高に言っている時点で、まだ世の中にそれが当たり前に馴染んでいない感じがするんですよね。「誰でも出られる大会でっせ〜」くらいで終わっとくのが一番理想ですよね。僕らお笑いの世界なんて、誰も「インクルーシブなトークをしよう」なんて思ってないですよ。ただ単に「おもしろい」が一番のステータスですから。
和田:本当におっしゃる通りですね。濱田さんは陸上競技大会に関わられるのは初めてですか?
濱田:マラソン番組の密着はありましたけど、本格的なトラック競技の大会はNAGASEカップが初めてですね。お笑いにはパラリンピックとかないので、僕はいつでもオリンピックに出て金メダル取るくらいの気持ちで舞台に立ってますけどね(笑)!
和田:すごい志ですね! 実はパラリンピックって、オリンピックが終わってから少し間が空いて別々に開催されるので、どうしても注目度が下がりやすい課題があるんです。でもNAGASEカップは障がいのない人もパラアスリートも同時にMUFGスタジアム(国立競技場)で競い合います。
濱田:へぇ〜! 別々にやらんと、同じ会場で障がいのない人もパラのアスリートも一緒に走るわけですね! それやったら熱量も途切れずにそのまま観られますし、めちゃくちゃええですね!
和田:そうなんです! だからこそNAGASEカップを陸上界の先行事例としてもっと盛り上げたくて、ぜひ濱田さんのお力をお借りしたいんです。
濱田:もちろんです!……ところで和田さん、普段僕のお笑いとか見てくれてます?
和田:競技者になる前はお笑いも含めていろいろなテレビ番組を見たり、ラジオもよく聴いていたんですが……走ることに集中しすぎたこの20年は、正直に言うと、家に帰ってもNHKのニュースくらいしか見てなかったんです(笑)。
でも今回、濱田さんの動画を見たら「こんなにおもしろいんか!」ってびっくりしまして。共演されている芸人さんもすごく楽しそうで、濱田さんがいるからこそ現場が盛り上がっている。NAGASEカップも、今はまだ「パラアスリートが参加させてもらっている」という感覚がどこかにあると僕は感じていて。だからこそ、濱田さんのように「この選手たちがいるからこそ盛り上がる大会」にしていきたいと強く思いました。
濱田:ニュースしか見てなかった人が急にめちゃくちゃ褒めてくれるやん(笑)! でも本当、変に難しく考えんと「なんかこの大会めっちゃおもろいな!」って観客が自然に楽しめるのが一番ですよね。
和田選手、49歳でフル2時間23分台……足の裏にローラーついてません?
濱田:それにしても和田さん、49歳でフルマラソン2時間23分台って、パラに限らず、同年代のランナー全体で見ても全国トップですよ! 足の裏に、ボタン押したら「ウィーン」って走るローラーでも隠してついているんじゃないですか?

和田:ついてないです(笑)。若い頃と違ってケガもしやすくなりますし、疲労の溜まり方も違うので、練習の頻度を調整したりクールダウンを長めにしたりと工夫を重ねています。年々タイムが上がっていて、今が人生で一番強い時期だと感じていますね。
濱田:いやいや、僕なんて運動してこない人生だったので、昔、女の子と歩いてるときに信号がチカチカして、横断歩道を3〜4メートル小走りしただけで2日間筋肉痛になりましたからね! 30歳過ぎて足ぶつけただけでも全然治らへんのに、49歳で記録更新し続けてるのは絶対おかしいでしょ(笑)。
長距離走ってるときって、頭の中でなに考えてるんですか?
濱田:マラソンとか5000mとか、ものすごい長い距離を走ってるときって、選手の人たちって頭の中で何を考えてるんですか? 「今日の晩ごはん何食べようかな」とか雑念が浮かんだりしないんですか?
和田:ジョギングの時は雑談しながら走るときもあるんですが、レース中はもうタイムの計算で頭がいっぱいです! たとえば1kmを3分25秒ペースという目標で走るとして、ほんの数秒遅れただけで自己ベストが出なくなる。だから、いかに一秒一秒を大切に走るか、ということにずっと集中していますね。

濱田:常に計算! 完全に数学の世界じゃないですか。
和田:それと同時に、路面の凹凸や交差点の段差、周りのランナーと接触しないかといったリスク回避にも全神経を尖らせて走っています。
濱田:雑念が入る隙間なんて1ミリもない(笑)! 1km3分25秒の爆速で走りながら、頭の中では超・緻密なタイム計算と危機管理をずっとやってるわけですね。恐ろしい集中力だ……。
(後編へ続く:どん底の低迷期から救った伴走者・長谷部選手との絆と、1500m「M-1ネタ1本分」の激走、そして目指すロサンゼルス2028パラリンピックでの金メダルへ!)
