上島宏之 代表取締役社長によるグループ社員向け年頭挨拶を下記のとおりお知らせいたします。

                    記

長瀬産業ならびに国内外のグループ各社の皆さん、明けましておめでとうございます。

新年早々、国内では悲しいニュースがいくつも飛び込んで来ました。元日には、能登半島地震がありました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、被災地の一日も早い復興を心からお祈りいたします。あのニュースを見て、自然の前では、人間は本当に無力な存在だと改めて感じました。地球規模で環境問題がこれだけ勃発している今、サステナビリティ活動に本気で取り組まないと地球は人間にきっと牙を剝いてくるでしょう。私個人としても、NAGASEとしても、例えばカーボンニュートラルなどできることから確実に実行していかないといけないと感じています 。1月2日には、羽田空港で旅客機と海上保安庁の航空機が衝突するという痛ましい事故が起き、尊い命が失われました。本当にこんなことが起こるのかと目を疑いましたが、誰もが事故や災害に巻き込まれる可能性があります。

今回グループの皆さんのどなたも負傷されることなく、皆さんの大切な方が失われたという報告も受けていないことを、不幸中の幸いだと感じています。誰一人欠けることなくこうして元気に今日という日を迎えられることを嬉しく思っています。当たり前のことを当たり前にできることが、本当に幸せなことだと思います。長瀬産業並びにNAGASEグループの皆さんにとって、2024年が、安全で実りある一年となることを心よりお祈りしています。

2023年を振り返ると、私個人にとっては新しいことばかりの一年でした。まさに「人は皆 師なり」という気持ちで、新しく出会った方々からもお話を聞いて勉強させていただきました。社長としていただいた仕事を全部やり遂げる覚悟で、新しいことはできる限り経験し、勉強し、吸収しました。また、できる限り当たり前を見直し、社会にとっても従業員にとっても、そして会社にとっても、「今やるべきだ。きっとその方が Well-being に繋がる」と信じチャレンジした9カ月間でした。

皆さん、昨年は一緒にこうしたチャレンジをしてくれて本当にありがとうございました。とても頑張っていただいたことに対し、感謝申し上げます。お陰様で変革の全体像の発信からはじまり、QUICK WINの立案実行、成長戦略とポートフォリオの見直し、11事業部から7事業部への組織再編、CEO室の立ち上げ、会議体の見直し、CVC立ち上げ、不採算事業の整理、攻めの広報、N-Meet upをはじめとしたコミュニケーションの場づくり、HRBP制度、CXO制度の立案、NBIC(ナガセバイオイノベーションセンター)・研究所の統合計画、名古屋支店の移転と大阪本社の改修プロジェクト、コーチングや執行役員研修といったオープンな学びの場の提供などを進めてきました。今年以降のための土台づくりは、私の頭の中ではほぼ想定通り進んでいると考えています。 一方、計数面は昨年の第2四半期決算報告時に2023年度の営業利益の推定実績を345億円から300億円に下方修正しました。その原因に対してはすでに手を打ち、行動を起こしています。今年度は厳しいと思いますが、ACE 2.0最終年度である2025年度には、元の軌道に修正できると信じています。

昨年の外部環境に目を向けますと、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエル・ハマス衝突、米中関係、また物価高に対する各国の金利引き上げによる円の独歩安といった、様々な地政学リスクが世界中で勃発しました。本当にこんなことが毎年起こるのかというほどです。自然環境を見ても、世界中で猛暑、集中豪雨、異常気象に見舞われました。一方、テクノロジーでは、ChatGPTに代表される生成AIがつい最近紙面を賑わせたと思っていたら、あっという間に身近な存在になりました。私にとっても良い壁打ち相手になっています。

お正月に85歳の母とAIの話をしましたが、母は「昔はいろんなことが不便だったけど、ひとつひとつの変化がゆっくりで、皆で喜び、感謝の気持ちを伝える余裕があった。人が人らしく、お互い足りないものは助け合って生きていた時代だった。」と言っていました。近い将来、人の仕事の40%以上がAIやロボットに置き換わることになるという論文も出ています。「便利になる=人にとってのWell-beingの実現」なのか、私は甚だ疑問を感じますが、この流れには抗えないのでしょう。まさに映画のような世界になっていくのではないかと思います。NAGASEではビジネスのチャンスととらえ、AIやロボットも積極的に活用を検討する一方で、NAGASEの強みである“人と人との繋がり”は、引き続き大切にしていきたいと考えます。

2024年は、世界的な選挙イヤーになります。アメリカ、ロシア、台湾、インドネシア、メキシコなど各国・地域のリーダーを決める選挙が行われます。韓国、インドでも総選挙があります。政権やトップが変わり、政策が変わり、国家間の関係も変わり、地政学的に大きな影響を及ぼす一年となりそうです。
つまり、今年は昨年以上の大きな変化が起りうると私は覚悟しています。働き方、人の関わり方、国家的な関係などニューノーマルは確実に形成されており、前例踏襲できるものもありますが、このままでは生き残れない時代が加速しています。この変化に対し、我々の都合は通じません。待ってはくれません。今までの常識や当たり前を疑い、見直す行動が大切だと考えています。

NAGASEは、変化を恐れず失敗を恐れず、トランスフォームしていきます。NAGASEの大切なものである経営理念や文化、お客様とのネットワークなど守るべきものは守り、そしてチャレンジするべきことは大胆に、そしてスピーディに変革して、一つずつ皆さんで答えを出すようにしてください。

今年、皆さんにお願いしたいこと、ご理解いただきたいことが3つあります。

1つ目は、NAGASEの成長戦略を十分に理解し実行に移すことです。ACE 2.0の基本方針である「質の追求」は踏襲していきます。昨年6月に打ち出したQUICK WIN、この中に成長戦略とポートフォリオの見直しがあります。実際に完了したのは昨年の11月なので、皆さんへの浸透は不十分だと感じています。今後も説明に上がりますが、それぞれが成長戦略をよく理解し実行していただきたいです。具体的には、今までのポートフォリオは事業別でしたがこれを機能別に分類しました。育成領域、注力領域、改善領域、そしてコア・基盤領域、各領域の戦略実行とリソースの選択と集中を加速していきます。少し時間はかかると思いますが市況や外部環境に負けない耐性のある強固なNAGASEのポートフォリオ構築を目指していくことが目的です。

2つ目は、全員で宝探しをしてほしいです。NAGASEのユニークネスの原石を見つけて皆で磨きをかけてください。これだけ変化の激しい時代です。トップだけが動いて見つかるものではありません。皆さんで新たな原石を見つけてほしいです。時代の節目には必ず新たなビジネスやビジネスモデルが生まれます。光る事業、光るアイデア、光る商品、つまりNAGASEのユニークネスの原石は、あちこちに散らばっています。世界の誰もがまだ見過ごしているかもしれないこの原石を、今までの常識にとらわれず、先入観で判断することなく、裏の裏まで目利きをして、皆さんがこれだというものを見つけてください。そして、丁寧に自分たちの手で磨きをかけてほしいと思います。NAGASEのユニークネス、できれば誰とも競争しない圧倒的なユニークネスを、今年も全員参加で探して下さい。

3つ目は、コンプライアンスの推進、サステナビリティの推進、そしてダイバーシティの推進です。コンプライアンスについてですが、すでにご説明しているとおり、NAGASEは皆が見ている会社です。たとえ適法であってもNAGASEとして適正かどうかを判断してほしい。そして、サステナビリティにおいては、カーボンニュートラル、エンゲージメント向上を掲げています。加えて今年はさらに新しいマテリアリティを掲げると思います。ダイバーシティについては、すでに女性活躍の環境整備を進めており、さらにグローバルで公平無私な人の教育、リーダーの教育を進めていきます。

以上が2024年の、私からのお願いになります。

最後に今年のスローガンですが、昨年4月にグローバルなグループスローガンとして“Delivering next.“を掲げています。今年もこれでいきます。ただし、皆さんにとってのNextは何かをよく考えてみて下さい。Delivering next solutionなのか、futureなのか、ideaなのか、dreamなのか。皆さんそれぞれが自分のnextを見つけ、それをもって、お客様のものづくりの課題を解決して下さい。ぜひよろしくお願いいたします。

結びとなりますが、NAGASEグループの皆さま並びにご家族の皆さまの、一年を通してのご健康とご健勝をお祈りするとともに、一日も早く戦争や紛争が終結し、世界が平和と安寧を取り戻すことを切に願いまして、私の年頭の挨拶とさせていただきます。

2024年1月4日
上島宏之