上島宏之 代表取締役社長によるグループ社員向け年頭挨拶を下記のとおりお知らせいたします。 

 

                      記 

 

長瀬産業ならびに国内外のグループ各社の皆さん、明けましておめでとうございます。 

こうして皆さんと変わらず一緒に、また新たな年を迎えることができ、大変嬉しく思います。 

思い起こせば、2024年の正月は能登半島地震が発生し、また一年を通して大雨による災害が各地で起き、多くの方々が被災されました。いまだにご苦労の多い生活をされている方々には、一日も早く平穏な生活を取り戻されることを切にお祈りしております。 

2024年の振り返りに入る前に、私の考え方について少しお話ししたいと思います。私は高校生頃から3年ごとにゴールを設定して生きてきました。特に社会人になってからはよりその行動が顕著になり、私がNAGASEに入社した時の最初の3年後のゴールは、独立して事業家になるためにこの会社の持つ経営哲学を吸収することでした。そして、あろうことか3年目に上長に辞意を表明しました。当時は「アホか」と一言で片付けられてしまいましたが、それ以降も私はその考え方を一切変えておりません。今考えると笑い話ですが、いずれにしても常に私は3年ごとにゴールを決めて生きてきたのは事実であり、社長になってもそれは変わりません。 

2023年に私が設定したゴールは今年最終年を迎えます。その前提で話をしますと、社長になって1年目の2023年は、自分自身はひたすらに朝倉会長から学び、吸収することと同時に、変革を進める土台作りをしようと決めて実行した1年でした。変革の全体像を描き、11あった事業部を7事業部に統合し、成長戦略とポートフォリオを再整理し、不採算事業の整理・改善を進めQUICK WINを出して皆さんの行動を促しました。 

去年2024年は、想定以上に外部環境変化の激しさを肌で感じ、不確実な時代をいかに生き残るか、そのために成長戦略に加えて、生存するための戦略は何かを考えました。過去から続けてきたオーガニック成長、あるいは売上、トップラインを拡大し成長していくというビジネスモデルを疑い、NAGASEを外部環境変化に耐えうる強靭で筋肉質なグループに変換することを目指した1年でした。そのために、売上総利益率の向上、在庫の削減、不採算事業の改善や撤退、現場への権限移譲、事業の統合、インド、ヨーロッパを含む決裁権限者の配置、CVCの立ち上げ、CXO制度の導入、従業員エンゲージメント向上活動の現場移管、若手育成のための書生制度導入など、思いついたあらゆることはすぐに実行しました。 

皆さんにとっては、どの施策が筋肉質になるのかと思われたかもしれませんが、一つひとつの施策がパズルのピースだと思ってください。私の頭の中では、どのピースが3年目のどのゴールに繋がっているか、どのピースから置けばうまくいくかを修正しながら、試しなら進めています。 

外部環境変化の影響はNAGASEだけの話ではなく、どの企業もこれからの生き残りを懸けて行動していきます。これからの数年間、多くの企業で外部環境に合わせた戦略が実行され、遅れた企業との優勝劣敗は明確になってくると思います。私たちが今進めている施策の一つひとつがそれぞれが繋がっていき、次のNAGASEグループ、つまり外部環境に負けない、そして成長し続けるNAGASEという一つの景色を描き出していくプロセスだということをご理解いただければと思います。社長就任から1年9ヵ月が経ちますが、一緒に働き、皆さんの中で考え方や行動規範、特に視座やスピード感が変わっていると、それはとても嬉しいことです。そして変わったことが当たり前になって、一人ひとりの一つひとつの行動が、2025年に向けて周りの仲間と相互作用することで、さらなる力を生み出す段階に来ている、あるいは準備ができているとなおいいなと考えています。 

ここからは未来の話をします。2025年は何といってもアメリカのトランプ新大統領の動静がやはり気になります。彼の政策には法人税のさらなる減税、不法移民の強制送還、パリ協定の再離脱、中国産品の排除、製造業の国内回帰、関税で威圧し各国とディールメイキングするなど、いずれもインフレ圧力をはらんでいます。 

中国は、米中貿易摩擦が緊張状態になり、経済成長率はさらに減速し、4%台に落ち込む、あるいは4%台を切ると言われています。欧州については特にドイツにおいて最大の貿易相手国である中国経済の低迷により打撃を受けている上にアメリカの関税が追い打ちをかける形になります。また、ロシアからドイツに向けたガス供給が停止され、エネルギー集約型の産業はドイツ国内での製造を続けるのは極めて不利になると思われます。 

世界経済は、中国や欧州が低迷する中、堅調な米国が牽引し、そこそこ拡大を保つと見ていますが、アメリカの保護主義政策が行き過ぎれば全世界の経済はたちまち落ち込むことも予想されます。トランプ新大統領が何をするのかは、そもそも予測不能なことなので一喜一憂せずにじっくり目利きし、慎重に対応していきたいと考えています。とはいえ、準備できることはしておくべきで、2024年から続けている筋肉質への体質転換の延長として2025年の外部環境の変化に対応し、現場でしっかりと進めていただきたいことが4つあります。 

1つ目は、インフレ対策として「率」の管理の徹底。また、競争優位性の高い商品へのポートフォリオの入替え。 

2つ目は、在庫削減・回転率の向上を含めたROIC経営の徹底。 

3つ目は、株主との対話の拡充。 

4つ目は、企業の優劣が明確化することの対策として焦げ付きのない与信管理の徹底。 

以上の4つをお願いします。 

ニューノーマルは確実に形成され、働き方も人の関わり方も国家間の関係もすでに変容しました。今後は米国を中心にその変容はさらに加速していきます。この2年間の自分たちの成長がどこまで通用するのか、急激な変化への耐性は身についたのか、そもそも生き残れるのかをお互いに検証しながら、失敗を恐れず挑戦し、トランスフォームしていきたいと考えています。そのカギはやはりひとの成長です。NAGASEにとってひとは命であり魂です。一人も取り残すことなく、同じ方向を向いて一緒に成長していきたいと考えています。 

2025年度はACE 2.0の最終年度として、皆さんにお願いしたいこと、ご理解いただきたいことを4つ説明いたします。 

1つ目は、QUICK WINで挙げた項目の中でも出遅れている「人財育成」「DX」「横ぐし」を含め、やり残しを上期中に徹底的に実行し、そのまま新中期経営計画の策定作業につないでいきたいと考えています。「人財育成」については、私も含めた経営陣の後継者育成を若い段階から実行できるしくみづくりと、この不確実な時代を乗り切るためのリーダー育成、多様な人財の確保、女性活躍のためのさらなる環境整備を行っていきたいと考えています。 

2つ目は、引き続きユニークネスの原石探しと回収を進めます。特に今年はCRMを活用し、現場から私も含めたコーポレート部門に直接情報を発信してもらい、私どもが確認できるしくみを構築します。今、私の理解では、すでに3つの原石をONE NAGASEで磨きをかけています。これを2025年度中に、6個に増やせることを期待しています。また、ただ原石を探すのではなく、その延長線上に人財育成も考えています。ユニークネスの原石を見つけ、そして原石に自分のアイデアを足し、周りを巻き込んでユニークネスに仕上げることができる。これはモノをつくる、ビジネスをつくる理想形です。これをつくることができる人財を育成したいと考えています。 

3つ目は、「サステナビリティ」、「コンプライアンス」、「ダイバーシティ」の3つの推進を継続します。「サステナビリティ」については、2024年9月に従来のマテリアリティ(重要課題)である「脱炭素社会への貢献(カーボンニュートラル)」「従業員エンゲージメント向上」「透明性の高いコーポレート・ガバナンス」に加え、新たに「健康寿命延伸への貢献」「サプライチェーンの持続性への貢献」「資源循環社会への貢献」の3つを追加しました。「ダイバーシティ」では、これまで進めてきた女性活躍のための環境整備に加え、すでに始めているグローバルでの人財育成をさらに加速させていきます。また、多様な背景を持つニューリーダーの育成に注力していきます。 

なお、「従業員エンゲージメント向上」については、2024年11月に長瀬産業で実施した従業員エンゲージメントサーベイでは、全体で改善がありました。サステナビリティ推進室からも案内させてもらっている通り、エンゲージメントとは、「会社と社員が向き合うことではなく、会社と社員が同じ方向を向くことだ」と定義しています。今年も向上活動の継続をよろしくお願いします。 

一方で、2024年から「従業員エンゲージメント向上」活動の主体を人事総務から事業部長、本部長、個社社長に移管しています。正直、組織によって取り組みに対する姿勢に大きく差が出ているのも認識しています。2024年11月に実施したサーベイの自由記述をすべて読みましたが、非常に厳しい意見も散見されました。現場の皆さんの声として真摯に受け止め、一つずつ改善をうながしていきたいと考えています。 

4つ目は、2025年の7月から、旭化成ファーマ(株)大仁工場のメンバーがNAGASEグループにジョインします。誰であっても新しい環境に飛び込むのは緊張するものです。お互いをリスペクトし、「人みな師なり」の精神で学び合っていただければと思います。よろしくお願いいたします。 

最後に今年のスローガンは、グローバルなグループスローガンとして、“Delivering next.”を継続して掲げていきます。 

結びにあたり、NAGASEグループのますますの繫栄とNAGASEグループの皆さん、ならびにご家族の皆さまの1年を通してのご健康とご多幸をお祈り申し上げるとともに、地球上から戦争がなくなり、世界が平和と安寧を取り戻し、世界中の子供たちが幸せに暮らせることを切に願い、私の年頭の挨拶とさせていただきます。 

 2025年1月6日
上島宏之