代表取締役社長 朝倉 研二

温もりある社会を目指して
経済価値と社会価値の両輪で持続的な成長を実現します

私たちは創業200年となる2032年の“ありたい姿”として、「温もりある未来を創造するビジネスデザイナー」を掲げています。ビジネスデザイナーという言葉は私が就任してからずっと使い続けていますが、研究開発やDX、ものづくりなどを通して、お取引先との関わりの中でビジネスをデザインできる企業体になりたいという想いを込めています。「化学系専門商社」という枠にとらわれず、誰の真似をすることもなく、NAGASEが新しい業態を作るぞ、という気概を持っています。この“ありたい姿”の実現に向けて、2021年度からの5カ年計画となる新中期経営計画「ACE2.0」を策定しました。

新中計の柱には、前中計で見られた変革の兆しを止めることなく推し進めるため、引き続き「企業風土の変革」と「収益構造の変革」を掲げました。

事業活動の“質”を高め、経済価値と社会価値を創出し、企業風土を変革

「企業風土の変革」では、3つの方針を策定しました。一つ目は、「経済価値と社会価値の追求」です。サステナブルな社会の実現がグローバルに求められる中で、トップラインを伸ばしビジネス規模の拡大だけを追い求めていてはいけないというのが経営者としての認識です。もちろんNAGASEグループはこれまでも事業活動を通じて社会に価値を提供し、人々が快適に暮らせる安心・安全で温もりある社会づくりに邁進してきたのですが、今後の方向性としてより一層サステナビリティを追求する組織とマインドをつくり上げることが必要だと考えています。

二つ目は「効率性の追求」です。資本効率性の向上や、各ビジネスの利益率を上げることなどを含め、一つひとつの事業活動にかかる効率性を追求します。資本効率性に関してはROIC(投下資本利益率)を指標として掲げています。各事業で算出したROICをもとに「改善」「基盤」「育成」「注力」の4象限に分類・分析し、事業戦略を再考していきます。もちろん多くが「育成」事業や「注力」事業になればより健全な状態といえますが、現実にはあり得ません。NAGASEグループの事業では総じて「基盤」事業が強く、それによって安定した事業ポートフォリオが構築できているわけですが、一方で前中計の反省からインオーガニック事業に取り組んでいかなければという危機感もあります。ROICは既存事業を「注力」事業にシフトしていく際の判断指標の一つとして意識していきます。

三つ目は「変革を推進する人財の強化」です。NAGASEグループにとって従業員は重要なステークホルダーであり、従業員が活き活きと働ける職場環境の質を上げることは経営者の大切な使命です。従業員が働くことに喜びを感じることができれば、それがお客様へのソリューション提供やビジネス拡大の起点となり、最終的に事業活動を通じた経済価値と社会価値の創出につながると確信しています。

N-Sustainable事業の拡大により「収益構造の変革」を推進

「収益構造の変革」では、全社規模の事業入替や資源再配分の実施による収益性・効率性の追求、既存事業の強化に加え、“持続可能な事業”(N-Sustainable事業)の創出に取り組みます。N-Sustainable事業では、将来世代に持続可能な未来を残し、かつ革新的なサービスや技術を通じて「利益を生み出す解決策」を提供することを目指します。前中計でもインオーガニック事業の成長を掲げて新規事業を推進してきましたが、「ACE 2.0」では特にサステナビリティを強く意識し、社会・環境課題に応える新たな提供価値を事業化していくことを明確に示しました。5年後に営業利益ベースで50億円、全体の15%程度の規模を目指します。決して簡単ではない目標ですが、これを達成することが、“ありたい姿”に向かう重要な基盤になると考えています。

N-Sustainableの事業領域として「環境・エネルギー」「次世代通信関連」「ライフ&ヘルスケア」の3分野を定めました。どの分野も全くのゼロからスタートするわけではなく、例えばライフ&ヘルスケアでは、食品素材事業、バイオ分野での取り組みなど、過去からの取り組みや既に始まっている事業も含まれます。それぞれの分野で、代理店型の仕事もあれば、製造に携わる仕事もあり、更にはAIを活用した新素材探索プラットフォーム「TABRASA™」のような、いわゆるコト消費と呼ばれるXaaS(X as a Service)のビジネスモデルもあり得るでしょう。NAGASEには化学業界で培ってきたグローバルなネットワークがあり、技術にも精通しています。大事なのは、NAGASEが秀でた点を最大限に活かして社会に貢献することだと考えています。今後は3つの分野に位置付けられる事業への投資を強化していきます。投資判断の基準としては、ROICだけでなく、将来性や社会・環境課題との関連性など様々なものが考えられます。投資についても、従来の投資スタイルとは意識が大きく変わっていくものと思っています。

変革を支えるサステナビリティ

サステナビリティの推進については、「ACE 2.0」の期間中で終わるものではなく、これからずっと続く長い道のりと捉えています。NAGASEでは2021年2月に「サステナビリティ基本方針」を新たに策定しました。2020年6月に私自身が委員長となってサステナビリティ推進委員会を立ち上げ、国内外グループ会社や研究組織のトップと侃侃諤諤の議論を継続しています。ステークホルダーを明確に特定し、それぞれのステークホルダーに対する「重要課題(マテリアリティ)」を定めるプロセスは大きな気づきの機会となりました。具体的な非財務目標については今年度中に策定しますが、拙速に議論を急ぐことなく、グループ内での啓蒙も含めて一歩一歩着実に進めていくことが大切だと思っています。

新型コロナウイルス感染症の拡大により前例のない変化が起きている中、今、改めて経営理念に立ち返ることの重要性を痛感しています。「誠実に正道を歩む」。困難な状況にあっても、私たちの事業活動やステークホルダーの皆様とのコミュニケーションの根底にこの理念があれば、いずれは必ずいい方向に向かっていくと信じています。こうした状況だからこそ、全社を挙げて、誠実正道という理念を大事にしたいと思っています。今後も、普遍の経営理念のもと、人々が安心・安全で快適に暮らせる温もりある社会の実現に貢献すべく、グループ社員一丸となって邁進してまいります。引き続き変わらぬご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

長瀬産業株式会社
代表取締役社長
サステナビリティ推進委員会委員長
朝倉研二