CEO Message

代表取締役社長 朝倉 研二:どんな時代も社会に価値を提供し続け、NAGASEグループの持続的成長を実現します代表取締役社長 朝倉 研二:どんな時代も社会に価値を提供し続け、NAGASEグループの持続的成長を実現します

今般の新型コロナウイルス感染症の被害に遭われた方々に謹んでお見舞いを申し上げます。
また、治療に尽力されている医療従事者の皆様に心より敬意と感謝の意を表します。

「ビジネスデザイナー」として新たな提供価値を追求する

変化を変革の好機と捉え長期的にステークホルダーに価値を提供

NAGASEグループは創業以来、化学を基盤として人々の生活の幅広い分野を支える商材を取り扱ってきました。常に技術の動向を先読みし、未来に必要とされる製品や技術、サービスを見極めることで柔軟に事業の転換を図っており、現在も基盤ビジネスにとらわれることなく事業領域・事業エリアを拡大し続けています。

2020年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、世界規模で社会、経済状況を劇的に変化させています。足元では米中貿易摩擦の長期化、保護主義のさらなる台頭なども重なり、私どもを取り巻く環境は不透明感を増すばかりです。自由貿易の前提となる国家間のパワーバランスが動きつつあるなか、どのようにNAGASEグループをポジショニングしていくかは非常に重要な課題になると認識しています。

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大は、従業員およびその家族の安全、有事のサプライチェーンの確保、安定した財務基盤といったものの重要性を改めて肝に銘じる機会となりました。急激な時代の変化、環境の変化、そして各ステークホルダーの皆様が求めるものの変化を、私たちNAGASEグループの変革の好機と捉え、新たな提供価値の創出をスピーディーに進めていきます。

そしてこのような状況下だからこそ、これまで進めてきた将来への投資をぶれずに実行する姿勢をお見せすることが大切だと考えています。従前から投資を進めてきたDX(デジタルトランスフォーメーション)、将来の通信インフラの中核となる5Gなどの次世代情報通信関連ビジネスへの投資は、短期的な業績に左右されることなく推進していきます。

「見つけ、育み、拡げる」を体現する、NAGASEのビジネスデザイナー

「ビジネスデザイナー」は、私が社長に就任して以来大切にしているコンセプトです。商社機能にとどまらず、研究・投資・物流・海外・製造を加えたグループの6つの機能を連携させながらパートナーとともに事業を創り出すという考え方で、NAGASEグループの提供価値である「見つけ、育み、拡げる」を体現することでもあります。

私は、商社の醍醐味は自由度であると考えています。一つの製品や技術に縛られることなく新しいことに取り組める。そこにグループのユニークな製造・開発機能が加わることで、「ビジネスデザイナー」の可能性は無限に広がります。今は6つの機能を掲げていますが、これに限定するつもりはありません。例えば「AI」など全く新しい機能が加わることもあるでしょう。そう考えるとワクワクしてきます。

グループ内の知見を共有し最大限活用することで新たなビジネス・価値提供につなげるための連携強化も進めており、事業部やセグメントの枠を越えて次世代情報通信関連、3Dプリンター関連素材ビジネスなどの新しい取り組みも始動しています。お取引先にも「NAGASEグループなら新しい『+α』の価値をもたらしてくれる」と思っていただけたら嬉しいです。

中期経営計画「ACE-2020」の4年目を終えて

収益構造の変革

2020年3月期は、進行中の中期経営計画「ACE-2020」の4年目で、できたこと、できなかったことが見えてきています。今期は見通しを公表していない企業もあるなかで、私たちは新型コロナウイルス感染症の影響がNAGASEグループの事業領域において、下半期には概ね回復する前提のもとで見通しを公表しました。ACE-2020の計数は未達ということになり、経営者として重く受け止めています。今期は最終年度として各目標指標を追求することに変わりはありませんが、一方でアフターコロナを見据えた変革へのスピードも求められます。ACE-2020とのバランスをいかにとるかが今期の課題だと考えています。

「収益構造の変革」に関しては、KPIのうち、注力分野であるライフ&ヘルスケア、製造部門の収益改善、北米エリアについては大きな進展が見られました。

ライフ&ヘルスケアについては、2019年8月の米国Prinovaの買収によって収益構造の変革が進み、グループ全体のポートフォリオも大きく改善しました。また、グループの食品素材事業を拡大すべく、2020年4月には「フード イングリディエンツ事業部」を新設しました。今は欧米圏がメインですが、アジア圏への施策も打ち始めています。

エレクトロニクス事業は、地道に挑戦を重ねてきましたが、市場環境の影響もあり期待通りの成果には到達していません。事業部内でのポートフォリオの見直しが必要だと認識しています。次世代情報通信関連事業や半導体事業などは間違いなく成長分野であり、引き続き収益性を追求していきます。

製造業の収益力向上も重要なKPIであり、これについてはグループ各社が改革に力を入れたことで、様々な指標で著しい進捗がありました。どうしても結果を残せず将来性がないと判断した事業は撤退も進めており、良い方向に進んでいると考えています。

ACE-2020の大きなテーマは、新しい収益モデルの導入によるインオーガニックな成長です。既存の経営資源を駆使したオーガニックな成長の上に、今後の成長エンジンとなるべきインオーガニック成長を乗せていくという目標を掲げてきましたが、現状は数字に表れていない施策がいくつか見受けられます。原因として、事業投資の蓋然性評価に甘さがあったと反省しています。次期中期経営計画の策定に際してはこの点を改善していきます。

企業風土の変革

「企業風土の変革」に関しては、ACEのC※、すなわちコミットメントが極めて重要だと考えています。かつては中期経営計画で示された目標達成をそれほど真剣に捉えない企業風土がありましたが、PDCAを徹底し、数字への責任感、グループ一丸で同じゴールを目指す意識の醸成については、納得のいく進展が見られました。

もう一つ大きかったのが、Prinovaの存在です。Prinovaをグループに迎えるにあたっては、日本的な手法を押し付けるのではなく、相手の考えを聞きながら新しい体制を構築することを強く意識しました。このため、できあがった体制に対する理解度、浸透度が非常に高く、スピード感を含めて合格点を出せるPMI(統合プロセス)となりました。これは、真のグローバルカンパニーを目指すNAGASEグループにとって大きな財産になると思います。今後、従業員の働き方などを見直す際にも、グローバルな視点を意識したいと考えています。

※中期経営計画「ACE-2020」のACEは、Accountability(主体性)、Commitment(必達)、Efficiency(効率性)を表す。

「人々が快適に暮らせる安心・安全で温もりある社会」の実現に向けて

サステナビリティ経営への想い

サステナブルな社会の実現に向けた意識は、世界中で高まりを見せています。新型コロナウイルス感染症の拡大で企業行動に対する社会の関心が高まり、私自身もこれまで以上に意識するようになりました。社会全体のサステナビリティへの貢献と、「稼ぐ力」を高めて経済的な利益を拡大させる自社の持続可能な経営を両輪に、短期、中期、長期それぞれの視点でバランスをとることこそがこれからの経営だと思っています。

こうしたなか、今年6月にサステナビリティ推進委員会を立ち上げました。私が委員長を務めるこの委員会で、NAGASEグループのサステナビリティ経営を徹底的に議論します。石油化学をベースとしたケミカルのビジネスを軸に成長してきた私たちですが、今後は海洋プラスチックのような環境汚染や気候変動などに一層配慮しながら持続的に成長していく必要があります。我々はSDGsの17の目標全てに貢献することがNAGASEのサステナビリティではないと考えており、自社の強み、外部環境をしっかりと分析しながら方向性を定めていきます。

NAGASEグループは、主要なステークホルダーを「従業員」「お取引先」「社会・消費者」「株主」と定義しており、私は従業員を優先順位の第一に位置付けています。従業員がはつらつと働ける環境があれば、会社は成長軌道に乗り、それがお取引先や社会・消費者への貢献、株主の皆様に対する安定配当にもつながると考えています。

取締役会の実効性向上を目指して

経営と執行の明確な分離は考えていませんが、その分離の程度は大変重要だと認識しています。社外取締役の員数を従来の2名から3名に増員した理由もそこにあり、戦略的な議論をより活発に進めることを目指すものです。取締役会において社外取締役3名の意見が、より反映されることを期待しています。透明性の確保に向けては、指名委員会や役員報酬委員会なども設置しており、企業価値向上に向けた取締役会の実効性がさらにアップするものと考えています。

様々な経営資源を駆使し、新たな価値を創る

食品素材事業

NAGASEグループでは以前から、ナガセケムテックス(株)が食品素材としての酵素を取り扱っていました。2012年に(株)林原を子会社化しましたが、ユニークな製品力にこだわってきた一方で、グループ全体としては海外販路の確保が長年の課題でした。2019年に欧米に強い販売ネットワークを持つPrinovaを子会社化し、ようやく「駒」がそろいました。東南アジアという未開拓の市場も広がっており、商品群・サービスを拡充しながら一気に展開を加速させる考えです。フード イングリディエンツ事業部の設立はあくまで第一歩であり、将来的には関連組織を一つにまとめ、世界規模での運営をすることも考えたいと思います。安全第一の食品素材ですから、グローバルの法規対応やBCP対応に一層心を砕いてまいります。

次世代情報通信関連事業

実用化が始まった5G、さらには6Gまで見据えると、全く新しい特性を有するケミカル素材が今後数多く必要となることは間違いありません。NAGASEグループが蓄積してきた技術とネットワークを最大限発揮し、最先端のインフラの発展に貢献できるビジネスが次世代情報通信関連事業だと考えています。最先端の研究開発は常に進行し、ニーズも絶え間なく生まれ続けます。新しい特性を持つケミカル素材が次世代情報通信の基盤技術に採用されれば、新たな価値が生まれ、世の中を変える一助となることができます。素材と素材加工技術を中心としたグループならではの強みを活かしたアプローチで、一丸となって取り組みます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)

NAGASEグループ独自のDXをつくり上げる第一弾として、デジタルマーケティングの全社的なプラットフォームづくりに着手しています。専門人財が豊富な米国にチームを立ち上げ、日本でも2020年4月、デジタルマーケティングをグループ全体に浸透させる新組織グローバルマーケティング室を新設しました。デジタルマーケティングだけがNAGASEのDXではありません。例えばNVC(New Value Creation)室がIBM社と協業して開発を進めてきた、AIを活用した新規素材探索システム「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」は、今期中のサービス提供を予定しています。ほかにも、グループ内製造業の情報共有・効率化、ブロックチェーンを使ったサプライチェーン全体の流通管理なども含みます。これらを総合的に進め、他社が追随できないようなモデルをつくりたいと思っています。

次期中期経営計画を見据えて

私たちは、2021年度からの次期中期経営計画の策定に向けた議論を、時間をかけて行ってきました。今年に入り新型コロナウイルス感染症の拡大で社会・経済状況は大きく変わったわけですが、いわゆる「アフターコロナ」の世界は、デジタル化の加速など私たちが次の中期経営計画を議論する際に想定した世界とほぼ重なるものだと思います。そこに向けたスタートを一足早く切ることができていたことは幸いでしたが、さらにスピードを速める必要があると感じています。

私たちは経営理念の一節である「誠実に正道を歩む」という言葉を大切にしています。今後デジタル化が進み、商社としてのビジネスのあり方が変わっていくなかでも、お取引先が私たちに求めるものの根底にあるものはクオリティであり、信頼であると思います。どのような事業環境でも、私たちは常にこの「誠実正道」の精神に立ち返り、「人々が快適に暮らせる安心・安全で温もりある社会」の実現を目指してまいります。

今後とも一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

統合報告書2020

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統合報告書2020 一括ダウンロードPDF(5.5MB)

分割ダウンロード

  • 編集方針・目次(536KB)

  • NAGASEの提供価値(1.3MB)

    Our Value | Identify /見つけ | Develop /育み | Expand /拡げる | Driving Our Value/価値を、未来へ

  • マネジメントメッセージ(771KB)

    CEO Message/トップメッセージ | CFO Message/管理担当取締役メッセージ

  • 価値創造ストーリー(1.5MB)

    NAGASEグループの価値創造ストーリー | 1. Our Philosophy/経営の「拠り所」| 2. Our Business Model/ビジネスモデル | 3. Our Roadmap of Growth/成長戦略 | 4. Our Sustainability Management/サステナビリティ経営 | 5. Our Destination/NAGASEグループが目指すもの

  • 経営・サステナビリティ(1.1MB)

    Our Board/役員紹介 | 社外取締役インタビュー | コーポレート・ガバナンス | コンプライアンス | リスクマネジメント、責任あるサプライチェーン | 環境価値の創出 | イノベーション | 社会価値の創出 | 社会貢献活動

  • 事業ポートフォリオ(1.6MB)

    事業一覧 | 機能素材セグメント | 加工材料セグメント | 電子セグメント | モビリティ・エネルギーセグメント | 生活関連セグメント | 地域別戦略

  • データ・セクション(719KB)

    11年間の主要財務データ | NAGASEグループの歩み | 主なグループ会社・事業所一覧 | 株式情報 | 会社情報