CFO Message

管理担当取締役 池本 眞也管理担当取締役 池本 眞也

新たなビジネス、新たな価値を生み出し、企業価値を高める

中期経営計画「ACE-2020」の4年目を終えて

中期経営計画「ACE-2020」では「収益構造の変革」として事業ポートフォリオの最適化を打ち出し、注力ビジネスにライフ&ヘルスケアとエレクトロニクスを挙げています。

まずライフ&ヘルスケア事業に関しては、2012年の(株)林原買収以前から、バイオケミカル企業として食文化や医療などより生活に密着したビジネス提案ができる企業を目指し取り組んできました。その姿勢が2019年のPrinova買収につながり、ACE期間中の極めて大きな一歩になったと思います。

一方、残念ながらエレクトロニクス事業は目標の数値を達成できませんでした。この4年でトライ&エラーを重ねておりますが、エレクトロニクス事業は今、次の新しいビジネスライフサイクルに入る前の段階で苦労しています。

収益基盤の拡大・強化の部分では、グローバル展開の加速が必須です。NAGASEグループでは、アジアでの事業展開については以前から進めてきたものの、欧米ではまだアジアのように、NAGASEグループの存在感が示せるようなビジネス展開ができておらず、特に北米への注力をポイントにしています。この意味でもPrinovaの買収は、北米における食品素材事業拡大の足掛かりとなる大きな一歩となりました。

製造業は、収益に占める割合が年々大きくなっています。その中で、NAGASEグループはこういう基準でものづくりをしているという“NAGASEスタンダード”の構築が必要になるでしょう。それは表現を変えれば、NAGASEの名前があるだけで技術的にも財務的にも、そしてパートナーとしても安心できるという、大きな信用に基づくブランドです。今後、品質レベルや収益性をさらに上げながら、NAGASEグループの製造業のあり方を考えていきます。

「企業風土の変革」については無駄の排除と組織・機能の効率化を推し進めており、長瀬ビジネスエキスパート(株)への間接業務の移管はその成果の一つです。まだまだできる改革は多いと感じており、ビジネスや商材の提供と並行して、利益もきちんと出す仕組みづくりを整えます。

投資の規律を守るという点では前進しました。過去には、不採算でありながら継続してきた事業もありました。当然のことながら、企業価値向上という視点で捉えれば、続ける価値のあるものは続け、やめるべきものは早めに判断すべきです。ACE-2020では判断の基準となる「投資ガイドライン」を見直しました。これに基づき、方向性を見極めるべき事業を整理し、一つひとつ議論しているところです。今後は投資環境がますます厳しくなる中、自信を持って将来の絵を描けるものに対して積極的に投資していくことになるでしょう。

激変する事業環境の「潮目」を読む

足元の状況を振り返ると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響はやはり深刻です。

この影響を中長期的視点で評価する場合、3つの段階があると考えます。1つ目はまさに今、業績にどれほどの影響を及ぼし、その影響から今後どういった道筋で抜け出していくか。2つ目は、新型コロナウイルス感染症の影響で変わったものが、いずれは流行前の状況に戻るのか、あるいは戻らない場合はどうなるのか。そして3つ目は、変化した経済の規範が恒久的なものとなっていくのか。NAGASEグループとしてはこの3つを考え、これからの経営方針や対処方法を考えていく必要があります。

金融システムに問題が生じたリーマン・ショックと比較すると、今回はソーシャルディスタンスの施策を取らざるを得なかったため、実業の現場に大きな影響がありました。つまり実体経済への影響が非常に大きかったということです。

企業財務の観点で見れば、お取引先のキャッシュ・フローや資本構成も影響を受けていることが多く、ビジネスをする際には、よりシビアな目が必要となるでしょう。当然、投資に対する考え方も変わってきます。

今はまさに時代の変わり目です。仮に新型コロナウイルス感染症の影響がなかったとしても大きな時代の転換期にあることは間違いありませんから、ここでどう舵取りをするかはNAGASEグループの大きな課題です。この経験をアフターコロナで活かし、働き方や給与・評価体系などを今後どう変えていくかが、リスクマネジメントに加えてコーポレート・ガバナンスの観点からも重要になってきます。

もちろん変化はチャンスでもあります。例えばお客様や社内のコミュニケーションにおいてITツールが注目されました。NAGASEグループは幸いにも新型コロナウイルス感染症の拡大以前からDX(デジタルトランスフォーメーション)に着手し始めていますが、事業環境が激変する時代にしっかりと「潮目」を読み、柔軟な発想で答えを提供することで、事業機会をつかんでいきます。

NAGASEグループの企業価値を高める

グローバル・ガバナンスを利かせシナジーを最大化する

2019年度のPrinovaの買収により、海外でのビジネスが大きく拡大しました。グループ従業員も、今や半数以上をナショナルスタッフが占めています。

こうした状況を迎え、グローバルで標準化されたガバナンス体制を追求し、グループのシナジーを最大化することが大きなテーマとなっています。ACE-2020では従来の日本的なガバナンス体制を改めた上で、地域統括性をより高めるため、中国と米州で組織づくりを進めてきました。実際の取り組みはまだ緒について間もないのですが、着実に前進しています。

Prinovaには統合に際して質の高いPMIを実施し、お互いのカルチャーに対する理解と信頼の醸成、さらにはNAGASEグループのマインドの浸透も進みました。今も日々会話をしながら、より高いシナジーの発現に向けて取り組んでいるところです。Prinovaには、自社の製品ラインナップと欧米でのプラットフォームを活かし、スポーツニュートリションやインファントニュートリション、あるいは高齢者向け食品分野での発展を期待しています。

NAGASEグループらしい「 資本コスト経営」を目指す

ACE-2020では、ROIC(投下資本利益率)を指標に加えました。ROICを導入することで、資本コストに関する議論を経営陣で徹底的に行い、資本コストをより意識する経営への転換を図っています。

当社としてはROICの高い事業を積極的に伸ばすことを考えています。ただしNAGASEグループのビジネスは、長年にわたる強固な顧客基盤の上に成り立っているものです。ですから、ROICが低い事業であっても単純に撤退するのではなく、既存の顧客基盤を活用することで新たなビジネスの拡大につなげていきます。

ACE-2020におけるROIC、ROEの考え方

サステナビリティ経営の始動

ROEとESGのバランスを重視する

ACE-2020ではROEの目標値を6%以上と設定しています。2019年3月期に6%を達成したものの、現状は再び6%を割っている状況で、2021年度からの次期中期経営計画期間において、もう一度挑戦する考えです。

とはいえ、ROE6%という数値目標の達成だけに目を向けるものではありません。いうまでもなく企業価値を持続的に高めることこそが重要です。稼ぐ力が備わり、企業価値が高まれば、NAGASEグループのROEはおのずと改善していくと考えています。

一方で、サステナビリティ経営も重要です。2020年6月にサステナビリティ推進委員会を立ち上げ、サステナビリティ経営を本格始動させます。

サステナビリティ経営を推進する上で、ESGの観点は極めて重要です。経済的な利益のみならず、社会的な利益を尊重する考え方は、今回の新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけとして、さらに進んでいくと考えて良いでしょう。NAGASEグループにとって、社会価値を追求し続けることは間違いなく重要であり、今後もESGに対する真摯な取り組みを進めていく考えです。

ROEとESGは、NAGASEグループの経営にとって、どちらも重要な要素です。今後は特に、そのバランスを考えながら、経営資源を適切に配分していくことが大切です。NAGASEグループは今後も、サステナビリティ経営を強化しながら、新しいビジネス、新しい価値を生み出すことにも果敢に挑戦し、企業価値を持続的に高めていく所存です。

統合報告書2020

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  • 編集方針・目次(536KB)

  • NAGASEの提供価値(1.3MB)

    Our Value | Identify /見つけ | Develop /育み | Expand /拡げる | Driving Our Value/価値を、未来へ

  • マネジメントメッセージ(771KB)

    CEO Message/トップメッセージ | CFO Message/管理担当取締役メッセージ

  • 価値創造ストーリー(1.5MB)

    NAGASEグループの価値創造ストーリー | 1. Our Philosophy/経営の「拠り所」| 2. Our Business Model/ビジネスモデル | 3. Our Roadmap of Growth/成長戦略 | 4. Our Sustainability Management/サステナビリティ経営 | 5. Our Destination/NAGASEグループが目指すもの

  • 経営・サステナビリティ(1.1MB)

    Our Board/役員紹介 | 社外取締役インタビュー | コーポレート・ガバナンス | コンプライアンス | リスクマネジメント、責任あるサプライチェーン | 環境価値の創出 | イノベーション | 社会価値の創出 | 社会貢献活動

  • 事業ポートフォリオ(1.6MB)

    事業一覧 | 機能素材セグメント | 加工材料セグメント | 電子セグメント | モビリティ・エネルギーセグメント | 生活関連セグメント | 地域別戦略

  • データ・セクション(719KB)

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