新入社員の皆さん、長瀬産業、NAGASEグループ各社への入社、誠におめでとうございます。WEB参加も含め、今日109名の新しい社員が参加しています。
皆さんをグループの一員として迎えることができ、私自身大変嬉しく思っています。そして、近い将来、国内外のさまざまな場面で皆さんと一緒に仕事ができることを楽しみにしています。

さて、私たちは今、未だかつてない変化の時代に存在しています。一つ目は環境への意識の高まりです。社会価値と経済価値は両立できないという「トレードオフ」の考え方から、社会、とりわけ環境価値が経済価値の前提となる「トレードオン」の時代へと変わってきています。二つ目は、デジタル化の波、異業種の参入、海外勢の攻勢、直近ではAIチャットサービスをはじめとした技術イノベーションなど、一夜でマーケットの景色が変わる超競争時代にあるいうことです。そして三つ目は、金融や貿易が安全保障に利用される経済安全保障、米中関係やウクライナ・ロシアの戦争、中国・台湾問題などの地政学リスク、そしてCOVID-19によるパンデミック等、日々が有事、まさに「有為転変」の時代に突入しました。
これまで当たり前だったことが過去の常識となり、猛スピードでニューノーマルが形成されつつあります。
かつては、企業は一度トランスフォームすれば10年繁栄できると言われましたが、もはやその時代は終わり、われわれNAGASEも生き延びるために 常にトランスフォーム、つまり変革をし続ける事が求められています。
新入社員の皆さんは、入社する前から一緒に変革を進める仲間と期待されてNAGASEグループの一員になっています。不可能の反対は可能ではなく、挑戦です。一緒に成し遂げたいという情熱をもって、一日も早く先輩たちに溶け込み、変革のドライバーになってほしいと期待しています。

このような時代だからこそ大切にしなければならないのが、理念(パーパス)です。
NAGASEは誰か?NAGASEは何のために存在する会社か?
私たちには「社会の構成員たることを自覚し、誠実に正道を歩む活動により、社会が求める製品とサービスを提供し、会社の発展を通じて社員の福祉の向上と社会への貢献に努める」という大切な企業理念があります。
これこそが190年続くNAGASEグループのパーパスであり、私も含めすべての社員が意思決定に迷走したり、是非を判断する軸に迷ったときに立ち返る場所、そして全員が目指す不変のミッションだと思っています。皆さんもこれから大いに挑戦し、悩むときがあると思いますが、悩んだらこのパーパスに立ち返ってください。

ここで、この会社の190年という歴史について少しお話したいと思います。
この190年に積み重ねてきたものとはいったい何か。日本企業の平均寿命が約30年と言われていることに対し、NAGASEが190年続いたことには理由があります。それは紛れもなくNAGASEの信用です。 そして、世界中の人や企業にリーチできるネットワークと信頼関係こそが、190年積み重ねてきたものだと思っています。
ビジネス世界で、新興企業が非常に苦労し努力しても簡単には手に入らないものが信用です。この最も大切な信用という財産を、新入社員の皆さんは無償で引継ぐことができます。

ところで、信用とは何かと考えたとき、それはシンプルに約束を守ること、裏切らない、ということだと思います。
約束の期日に約束の金額を支払い、約束した納期に約束した数量の製品を納入する、製品の品質を保証する。ビジネスのすべては、約束を守ることで 成り立っています。これを190年間続けてきた、まさに誠実に正道を歩んできたからこそ、NAGASEはすべてのステークホルダーに信用され、「困ったらNAGASEに聞け」と言って頂ける現在の姿になっています。
近い将来、大いに挑戦していただき、この信用を活用して新しいビジネスモデルをデザインし、ますます発展してくれることを皆さんには期待しています。
私にとって、人はNAGASEの命であり、魂です。人を育て仕組みを作ることが、私にとって最も重要な仕事であり、NAGASEの成長につながることと信じています。

ここで、私から皆さんに3つのアドバイスをします。

まず一つ目のアドバイスです。君たちは雑草です。
私も入社した時、雑草でした。雑草とは、その美点がまだ発見されていない植物のことを言います。私はいきがった雑草でした。どんな大学を出ようと、どんな家庭に育とうと、どんなにスポーツができようと、社会に出れば皆ただの雑草です。人から美点を見つけてもらって初めて植物になれます。承認してもらうのではなく、皆さんのそれぞれのステークホルダーに美点を見出してもらってください。
そのためには「一灯照隅」です。これは、一つの光で隅を照らす、最初は小さな光でも集まれば大きな光になる、という意味です。自分に与えられた仕事に誇りを持って、きっちり自分の仕事を全うしてください。そのために、もう一つ付属のアドバイスとして、子どものようにいつも「なぜ?」と疑問を持ち、遠慮なく人に聞くようにしてください。

二つ目のアドバイスは、この会社は 「やりたいことをやらせてくれるいい会社」だということです。
君たちにそれをやり遂げる強い意志と覚悟があれば、上司や先輩はあなたの挑戦を後押ししてくれるでしょう。歴史を見ても、不可能を受け入れなかった人によってのみ、変革は成されています。世代、ジェンダーや国籍は全く関係ありません。一歩を踏み出し果敢に挑んでください。
一生懸命挑戦しても最初はおおむね上手くいかないと思います。しかし、NAGASEはチャレンジした失敗を許容する企業文化があります。おかげで私もいろいろ過去に経験させて頂き、多くの方に助けて頂きました。その方々がいまだに私のサポートについてくれています。
失敗したら、まず失敗したことを自覚してほしい。ごめんなさいではなく、その失敗の真因をよく分析し、考えてください。そして、それを上司や周りの人にシェアしてください。失敗はデータです。蓄積すればするほど、次の成功の確率は上がります。失敗を経験として生かせば必ず成功できると私は信じています。

三つ目のアドバイスはシンプルです。皆さんに読んでいただいた課題図書にあったように、何かが起きたとき、しっかり当事者意識を持って考え、主体的に行動してほしいということです。自分を変えるのは自分しかいません。自分は人を変えられません。自分が変われば周りが変わります。ぜひ皆さん、その意識を持って会話をして欲しいと思います。辛い時こそいい運がたまっている時だと思って、頑張ってください。

今日、この入社式に参加している109名は、今後20年、30年経っても同期です。生涯を通してかけがえのない仲間になります。ある時は相談しあい、あるときは支えあい、そしてある時はライバルにもなるでしょうが、是非ともこの絆を大切にしてください。

皆さん、改めまして入社おめでとうございます。
NAGASEグループは私が愛する素晴らしい企業集団です。必ず皆さんがやりがい、生きがいを持って仕事ができる職場だと信じています。皆さんが日々切磋琢磨し、一日も早く活躍することを心から祈っています。次に会うとき、皆さんの目にまた違った光が宿っていることを楽しみにしています。

最後になりますが、皆さんは既に社会人であり、NAGASEの信用を背負っています。自覚を持って行動するようにお願いします。

以上で私からの挨拶の結びとします。

2023年4月3日
上島宏之