水資源に対する基本的な考え方

国連が進める持続可能な開発目標(SDGs)を通じて、すべての人々への安全な水の確保を目指し、水へのアクセスを含む、より豊かな生活の実現が求められています。

こうした状況を踏まえ、NAGASEグル―プでは、事業活動の中で適切な量の利用、リサイクル、再利用を徹底すると共に、利用効率の改善、水使用量の削減に取り組んでいます。

NAGASEグループ 水管理計画策定状況

NAGASEのグループのうち、10社が水の管理計画を策定し、取排水量、リサイクル量を把握し、水資源の適正管理や、環境負荷の低減に取り組んでいます。

取水

すべての拠点において第三者供給水からの取水を行っており、一部の製造拠点(ナガセケムテックス(株)播磨事業所・ナガセヴィータ(株)岡山機能糖質工場)では地下水からの取水も行っています。

排水

工場の立地条件により、ナガセヴィータ(株)岡山第一・第二・機能糖質工場、およびナガセケムテックス(株)播磨事業所については、流域河川への放流を行っています。放流に際しては、水環境改善のための汚濁負荷削減等の各種対策を推進し、管理基準を設け環境基準に適合するよう排水水質の維持を図っています。

リサイクル

複数の拠点で蒸気発生後の凝縮水をボイラー給水に再利用しています。また、ナガセケムテックス(株)では水冷式チラーにおいて冷却用にリサイクル水を使用しています。

目標と進捗

水資源削減のための目標と実績

開示項目 目標項目 バウンダリー 2022年度目標 2022年度実績
水資源 取排水量
リサイクル
グループ 【定性】
NAGASEグループ環境方針(2.環境に配慮した事業推進)に沿って、取排水量、リサイクル量を把握し、水資源の適正管理や、環境負荷の低減に取り組む。
達成

水資源データについては、こちらをご確認ください。

水使用量削減に向けた取り組みとパフォーマンス

ナガセヴィータ(株)・グループ

2018年9月~2020年3月末まで、ナガセヴィータ(株)今保事業所において、給排水量削減を目的としたプロジェクトを立ち上げ、対策を実施しました。プロジェクトの推進により、2020年度までで20%の削減(対2018年度)を達成しています。なお、ナガセヴィータ(株)では2025年までに上水使用量を7%削減(2018年比)するサステナビリティ行動計画を定めています。削減の取り組みは製造連携委員会で共有し、グループ各社で水使用量削減に努めています。プロジェクトでは水使用量削減にかかった費用や効果などを具体的に数値化(定量化)する水会計の仕組みを活用しました。

※削減対象サイトのカバー率は90%(2021年度・取水)

水ストレス地域

NAGASEグループでは、2022年度「The WWF Water Risk Filter」を用いた拠点の水リスク評価を行っています。
開示している全拠点(100%)のリスク計画を行っています。

拠点の水リスク評価 水リスク管理詳細
拠点 水リスクレベル 取水 リサイクル 排水
第三者供水 地下水 河川への放流
ナガセケムテックス播磨事業所 2.38
ナガセケムテックス堺工場 2.57
ナガセヴィータ岡山第一工場 2.04
ナガセヴィータ岡山第二工場 2.04
ナガセヴィータ岡山機能糖質工場 2.04
ナガセヴィータ藤田工場 2.35
ナガセヴィータ藤田製剤工場 2.35
ナガセヴィータ福知山事業所 2.01
長瀬産業東京本社 2.98
長瀬産業大阪本社 2.66
長瀬産業名古屋支店 2.54
ナガセバイオイノベーションセンター 2.66
ナガセアプリケーションワークショップ 2.66
ナガセグローバル人財開発センター 2.98

※拠点の水リスク評価は、「The WWF Water Risk Filter」を用いて評価しています。
https://waterriskfilter.panda.org/

※リスクレベルは、「Very low 1.0-1.8」「Low 1.8-2.6」「Medium 2.6-3.4」「High 3.4-4.2」「Very high 4.2-5.0」です。

生産拠点の水質保全のためのエンゲージメント

ナガセケムテックス(株)

2022年度に実施した「The WWF Water Risk Filter」を用いた製造拠点の水リスク評価(流域リスク)において、ナガセケムテックス(株)播磨事業所は、流域リスク2.38と評価されています。播磨事業所では、水処理基準の規制強化に備えて現在は法令上で定められた水質検査の頻度(年1回)を強化して年2回実施し、特定の有害物質(ジオキサン)を毎月測定しています。ジオキサンについては法令上の報告義務はありませんが、播磨県民局西播磨県民局 より毎年1回の査察を受けており、その際に開示しています。また、たつの市環境課 揖保川漁協組合に対しても法令上の義務はありませんが、1回/年の報告を行っています。

排水と廃水処理

協働による排水処理システム活用

NAGASEグループの(株)アイエンスが提供する化学薬品に頼らない排水処理システム「アクアブラスター」を、ナガセヴィータ(株)が導入し排水処理の安定化とコスト削減につなげています。「アクアブラスター」は日本国内、海外の食品加工工場やホテルなどの排水処理に関する課題解決に貢献しています。

「アクアブラスター」の詳細は下の「取り組み事例」をご確認ください。

国内最大級オゾン発生 排水処理設備

NAGASEグループのナガセケムテックス(株)では、製造⼯程で⽣じる廃⽔を排⽔処理設備で浄化し、基準値以下の⽔質で河川へ放流しています。そして、環境負荷低減の取り組みとして、排⽔の処理⽅法、設備の改良・改善を⾏っています。以前は浄化しきれなかった廃⽔を産業廃棄物として処理していましたが、敷地内の排⽔処理設備で浄化し、廃棄物削減による環境負荷低減を推進しています。
更にオゾン技術を活⽤したAOP(Advanced Oxidation Process:促進酸化処理)設備によりCOD値の上昇の緊急時に規制値以上の汚水を排出させない仕組みを導入しています。

国内初・半導体製造に使用される現像液の回収・再生の事業化

ナガセケムテックスと長瀬産業、Sachem Incは、半導体製造に使用される高純度現像液(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド:通称 TMAH)の回収・再生事業を展開します。本事業は、3社の合弁会社で現像液の再生事業を手掛ける SN Tech Corporation(以下「SN Tech」) が電解・精製技術を導入し新工場を東大阪に設立する計画です。半導体分野において、使用済みTMAH廃液を回収・再生し、再びTMAHとして再利用する取り組みは国内初の事例となります。また、SN Tech 株式会社は現像液の廃液を原料として回収するプラント”Green Mobius System”の製造・販売も半導体工場向けに実施していく予定です。

水関連リスクに関連するコストと投資

NAGASEグループでは、化学品製造会社としてより厳しい水処理品質が求められ、排水設備等への投資や維持管理コストが増加するリスクがあります。影響額は水処理施設への投資額を想定し、排水処理施設の補修対応を行った場合の財源影響額は、中〜高程度であり、重大なリスクとして特定しています。

水監査

当社の開示する水資源利用量について、情報の信頼性を高めるため、ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社による第三者保証を受けています。

取り組み事例

(株)アイエンス「アクアブラスター」による水資源保全

NAGASEグループでは、水資源問題における企業の環境規制対策と水資源保全ソリューション提供について重要な課題であると捉えています。NAGASEグループの関連会社である(株)アイエンスの排水処理システム「アクアブラスター」は、独自技術により微生物の代謝を促し、化学薬品に頼らない排水処理を実現し、既に数多くの工場の排水処理設備などで導入されています。また、「アクアブラスター」を備えたスクラバー(大気汚染・悪臭の防止を目的とした装置)「デオライザー」も、化学品メーカーや食品工場などから排出される有機溶剤や排煙の処理に優れた効果を発揮し、既に多数の導入されています。今後も「アクアブラスター」の提供を通じて、排水処理能力の向上による企業の環境規制対策と水資源保全に貢献してまいります。

アクアブラスター

井水(井戸水)の活用

NAGASEグループでは、限りある水資源を大切にするため、できる限り使う水を少なくする(Reduce)、繰り返し使う(Reuse)、処理をして再生利用する(Recycle)、「水の3R」について重要な課題であると捉えています。ナガセケムテックス(株)播磨事業所は、地下水の豊富な揖保川流域にあり、1年を通じて水温が一定である地下水を製造工程での冷却水に活用しています。また、冷却水を、別工程の洗浄水として利用するカスケード(多段的)利用を行うことで、製造現場における「水の3R」に取り組んでいます。

井戸水

水資源に関するデータ