CEO Message

代表取締役社長 朝倉 研二代表取締役社長 朝倉 研二

今般の新型コロナウイルス感染症の被害に遭われた方々に謹んでお見舞いを申し上げます。
また、治療に尽力されている医療従事者の皆様に心より敬意と感謝の意を表します。

培ってきた強みとサステナビリティの視点を活かし“質の追求”に取り組む

現状に満足せず、“質の追求”をさらに深める

“質の追求”を掲げた中期経営計画ACE 2.0の1年目は、力強い成果を残すことができました。

2022年3月期は、半導体不足の影響、物流の混乱に加え、原材料市況の高騰などにより厳しい収益環境にありましたが、そのような事業環境の中でもNAGASEグループは流通の担い手として供給責任を果たし、関連業界におけるサプライチェーンの維持に貢献したことでお取引先からの信頼を維持・向上させることができました。

「NAGASEに頼めば、何とかしてくれる」というお取引先からの評価はNAGASEグループの実力であると自負しており、様々な分野でシェアを上げている要因の一つと考えています。これにより業績は伸長し、全セグメントで増益となって、売上総利益以下全ての段階利益で過去最高益を更新することができました。特に自動車、樹脂及びエレクトロニクス関連、食品関連ビジネスが好調でした。

ただ、今回の業績好調には、材料価格高騰など市況の影響も追い風として作用した面があると分析しています。今後の市況を注視しつつ、好調な分野をさらに伸ばして、市況に左右されない力強い成長を目指します。

ACE 2.0で掲げた“質の追求”はまだまだ道半ばです。好業績に浮かれることなく、着実に施策を遂行していかなければと気を引き締めています。もちろん “質の追求”に取り組んだ1年目の結果として、事業ポートフォリオの入れ替えなど効率性の改善は確実に進んでいます。新規素材開発等での優れた技術への投資や、新規ビジネス創出が期待できる分野でノウハウを持つスタートアップ企業への投資を実施しました。従業員の意識も大きく変わり始めており、間違いなく前に進み始めています。

一方で、足元の課題としてはサプライチェーンの混乱がしばらく続くと見ています。引き続き注意深くウォッチし、サプライチェーンの維持を図ります。

NAGASEのビジネスを取り巻く外部環境の認識

現在の事業環境は、ACE 2.0の策定時とそれほど大きくは変わっていないと認識しています。ただし、ウクライナ情勢の変化は想定外でした。地政学リスクにより経済活動が無力化し、ロシアからのエネルギー供給問題を受けて、関連する施策も大きく変わっています。

NAGASEはエネルギーに直接関連する仕事が多いわけではありませんが、価格の高騰により消費財の購買意欲が今後下がることも考えられるため、とりわけ生活関連セグメントにおいては注視していかなければなりません。NAGASEグループの製造部門におけるエネルギーコストが高まっている点も懸案事項です。

また、中国の動きも注視しています。医薬品や食品をはじめ、中国に対する世界的な依存度が非常に高い中で、米中、台中間の摩擦が激しくなれば、全ての事業に影響が出ることは避けられません。これに備え、ソーシングの多角化についての検討を始めました。さらに、北米の西海岸における滞船やストライキの長期化に加え、日本では2024年問題※が挙げられます。これらの問題に対しても、NAGASEグループは商社としての強みとサステナビリティの視点を活かし、“質の追求”に取り組んでいきたいと考えています。

※働き方改革関連法によって、2024年4月から「自動車運転の業務」に対して「時間外労働時間の上限規制」などが適用されることに伴い発生する物流業界の諸問題

注力事業と基盤事業の両軸で未来を切り開く

このように外部環境は変化の激しい状況にあるものの、NAGASEグループの成長を牽引する分野として大きく期待できるビジネスも数多くあります。

今後の展開に関して最も楽しみにしている事業の一つはバイオ関連事業です。NAGASEグループでは長瀬産業㈱・ナガセケムテックス㈱・ ㈱林原の3社それぞれでバイオに関わる研究開発に取り組んでいますが、それらを一つに集約し、多彩な分野でのバイオテクノロジー活用を進めているところです。ACE 2.0の期間中に成果が多く現れることを期待しています。

次に、半導体事業です。自動車をはじめ様々な分野で電子部品需要が高まっており、今後もまだまだ伸びていくと考えられます。NAGASEグループは半導体のプロセス材料となる高機能材料を多数扱っているため、これは大きなプラスとなります。今後は、グループ横断型組織により、サプライチェーン全体での情報共有・連携促進に取り組んでいきます。

また、世界的な健康志向の高まりを受け、ニュートリションに関わる食品素材事業も、これからが楽しみです。Prinovaグループの買収により、NAGASEグループは既にある程度のシェアを有しており、期待はさらに広がります。加えて、今後は東南アジア地域での展開の加速や、設備投資もしくはM&Aによる拡張も視野に入れています。

これらの分野で積極的に行ってきた新規事業への投資が現在のリターンにつながり始めており、これからのNAGASEグループを牽引する柱になっていくことを期待しています。もちろんこうした注力事業だけでなく、NAGASEグループには化学品・樹脂という基盤事業があります。これらのビジネスは依然としてNAGASEの大黒柱であり、サステナビリティの要素を加味して、量だけではない“質の追求”を続けていきます。

さらにその先で、環境に関わるビジネスにも期待を寄せています。NAGASEグループの多彩な技術力を活かし、カーボンニュートラルをはじめとした様々な形で環境改善への貢献に取り組んでいます。例えば化学業界でのカーボンニュートラル推進に向けては、㈱ゼロボードが開発した温室効果ガス(GHG)排出量算出・可視化のクラウドサービスを同社と共同で事業展開しています。Scope1・2だけでなくScope3まで含めてGHG排出削減の施策を提案するサービスで、他社にはない価値を今後も追求していきます。まずはお取引先の課題解決に取り組み、将来的には新しい技術を活かしたソリューションの提供につなげていきたいと考えています。

“Delivering next.”――ビジネスデザイナーとしてサステナビリティを追求

強い覚悟でサステナビリティを推進

NAGASEグループが今後ビジネスを拡げ、価値を創り上げていく上で、サステナビリティの追求は欠かせないテーマです。2022年4月1日付でコーポレートコミュニケーション本部をサステナビリティ推進本部へと名称変更し、社長直下の組織とするなど、サステナビリティ推進体制を一層強化しました。

サステナビリティに対するNAGASEグループの姿勢もさることながら、何よりまず私自身が圧倒的に変わりました。社長に就任し、SDGsが採択された2015年頃は、SDGsも今ほど注目を集めていませんでしたし、欧米に足を運んだ時でも、それほど耳にすることもなかったと記憶しています。それが数年経ち、2018年頃から名だたるメーカーの姿勢が大きく変わってきました。欧米の先進的な取り組みに対して日本は大きく遅れをとっている、この流れに取り残されてはならないという危機感を肌で感じ、社内での浸透に取り組みました。

サステナビリティの取り組みも“質の追求”の一環と考え、2022年は“Green it!”というテーマのもとでNAGASEグループ全社員にサステナビリティ意識の浸透を図っています。社員一人ひとりがサステナビリティへの想いを自分ごととして持つことで、会社の社会的価値も上がっていくはずです。

サステナビリティ活動では、「従業員エンゲージメントの向上」と「カーボンニュートラル」を喫緊の課題と認識し、2つのコーポレートプロジェクトを立ち上げ、議論を重ねてACE 2.0で非財務目標(KPI)を掲げました。財務目標と同等の重要度と認識して進める覚悟です。

従業員エンゲージメントがグループの持続的成長に不可欠であることは言うまでもありません。NAGASEグループのエンゲージメントは、組織と従業員がお互いを理解し合い、高め合うことだと定義しています。私は、会社にとって最も大事な資産は人だと考えています。これからのNAGASEにとって必要なのは、自らが進んで変革に取り組む姿勢を持った人財ですが、一人でできることは限られています。組織と従業員が互いを高め合う風土が醸成されれば、双方の壁を越えたコミュニケーションが活性化し、NAGASEは格段に強くなるでしょう。まずは現状を認識するため従業員エンゲージメントサーベイを実施し、課題の抽出を行いました。引き続き双方向のコミュニケーションを推進します。

「次」を積み重ねて温もりある未来をつくる

NAGASEグループの提供価値をグローバルに発信することを目的に、2021年から約1年半にわたってアウターブランディングプロジェクトを進めています。ブランドの強みをしっかりと示していくため、経営理念やビジョンといった普遍的な価値と、顧客が求める価値など内外部環境の変化について顧客・従業員へのヒアリングを実施。改めてグループの提供価値を議論し、“Delivering next.”を新グループスローガンとして定めました。

“Delivering next.”は、様々な意味が込められた、ワクワクする言葉です。当社には長い歴史があり、これからも全てのステークホルダーの皆様が次のステージへ向かうために欠かせない存在でなければなりません。未来を見据えながら「次」と向き合い、目の前の課題を解決していくという姿勢・想いを込め、“Deliveringnext.”という表現としました。NAGASEグループとパートナーの皆様とで「next=次」を積み重ねていくことがより良い未来につながっていくと確信しています。

私たちは今、ACE 2.0のもと「収益構造の変革」と「企業風土の変革」の真っただ中にいます。今後も“質の追求”を進める上で、足元の業績ばかりにとらわれず、創業200年となる2032年の“ありたい姿”として掲げる「温もりある未来を創造するビジネスデザイナー」の実現、そしてさらにその先へまい進してまいります。皆様にNAGASEグループならではの価値をお届けしていくために、普遍の経営理念のもと、サステナビリティを追求し、ぶれない姿勢で挑戦を続けていきます。

統合報告書2022

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  • 編集方針・目次(828KB)

  • NAGASEグループの価値創造ストーリー(905KB)

    NAGASEグループの価値創造ストーリー

  • マネジメントメッセージ(1.5MB)

    トップメッセージ | 管理担当取締役メッセージ

  • NAGASEグループが選ばれる理由(4.5MB)

    WHAT/NAGASEグループの強み | NAGASEグループの存在意義 | 価値創造の歴史 | NAGASEグループのビジネスモデル | 重要な経営資源 | HOW/NAGASEグループの成長戦略 | 中期経営計画の概要と進捗 | 特集 Prinovaグループが牽引する食品素材ビジネス | 特集 成長の鍵を握るNAGASEのバイオ技術 | WHERE/NAGASEグループが目指す未来 | サステナビリティ推進本部 本部長メッセージ | NAGASEグループが取り組むサステナビリティ | マテリアリティとKPI | コーポレート・ガバナンス | コンプライアンス | リスクマネジメント | 社外取締役インタビュー | 環境価値の創出 | 特集 サプライチェーンにおける脱炭素への貢献 | 社会価値の創出 | 特集 NAGASEのDX推進組織 | 社会貢献活動

  • 事業ポートフォリオ(2.9MB)

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  • データ・セクション(1.6MB)

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