社外取締役インタビュー

2020年から伊地知 隆彦氏と野々宮 律子氏が加わり、家守 伸正氏を含む社外取締役3名体制になって1年が経ちました。
「ACE 2.0」に対する期待やNAGASEグループのサステナビリティについての考えを伺いました。

社外取締役:家守 伸正、伊地知 隆彦、野々宮 律子社外取締役:家守 伸正、伊地知 隆彦、野々宮 律子

この1年のNAGASEグループの取り組みで印象深かったことをお聞かせください。

家守

私が一番印象に残っているのはグループ製造業連携委員会です。この委員会は国内のNAGASEグループ製造業11社を対象に安全衛生・品質・環境といった非財務分野の基盤を強化し、グループ全体の企業価値と持続的成長を促すことを目的に発足しました。11社の中には規模が小さく、人的資源に限りがある会社もありますが、ナガセケムテックス(株)と(株)林原が委員会をリードし、施策の共有や委員会の方針に基づいた共通のKPI設定とモニタリングを進め、成果が上がってきており、非常に期待を持っています。今後は、モニタリングを通して遅れが出ている会社のレベルをどのように上げていくか、そして、海外の製造業をどのように組み入れるかが課題になると考えています。

伊地知

就任後間もなかったので、この1年は印象に残ることばかりでした。とりわけ印象に残っているのが取締役会でのやり取りです。ある事業からの撤退について話が及び、なぜこの事業を始めたのかという議論になった時に、当時の経営陣であった方が自らの判断の誤りを冷静に認める発言があり、驚きました。経営者が自らの失敗を認めるのはなかなかできることではありません。この潔さは経営理念である「誠実に正道を歩む」に通じると思います。長瀬産業の強さ、サステナビリティの源流を改めて感じました。新規事業を始めることに対しての積極的な姿勢は評価していますが、一方でリスクに対する評価や切込みが少々甘いと感じています。人をリスペクトするという企業風土も影響しているのではないかと思いますが、新規事業には必ずリスクはありますので、リスクを適切に評価・認識した上で意思決定をするというところについては、改善の余地があると考えています。経営として根拠なき楽観論に身を委ねるのではなく、そのリスクを認識し、管理していく覚悟を示すことが大事だと思います。

野々宮

私も印象に残ったことはたくさんありますが、1つ挙げるなら、DXに対する投資や取り組みがものすごく進んでいることです。DXという抽象的で分かりにくいテーマに対して綿密な行動計画を立て、社内外のリソースを的確に投入している。外部のコンサルティング会社を入れたり社内でプロジェクトチームを立ち上げたり、専門性の高い人財を外部から招聘したりと、しっかりと取り組まれているところに、とても驚きました。DXの取り組みにおいてNAGASEグループは他社に先んじていますし、成果が期待できると思います。

「ACE 2.0」の印象と、推進していく上での重要なポイントに ついてお聞かせください。

家守

1年半近くの時間をかけ、取締役会でも議論を重ねて作った計画ですから、目標は必達することが重要です。そのためにはPDCAを回すことが必要ですが、一番重要な収益構造の変革を含め、物差しとなるKPIの項目数が「ACE2020」より減っているのが少し心配です。数が減れば、それに関わる事業本部や子会社の数も減るはずです。そこから外れた社員が我関せずという雰囲気にならないように、それぞれの部門がPDCAを回しているということをコーポレート部門がきちんとモニタリングしてほしいと思います。

野々宮

私が感じたのは、社員の皆さんが「変わる」ということに対して抵抗がないことです。変わることに対して保守的になるとか、拒否反応が出たりしないところに、NAGASEグループのDNAと企業文化の一端を感じました。

伊地知

「ACE 2.0」には「NAGASEグループを変えていこう」という想いが随所に現れていて、とても素晴らしいと思います。この立派な経営計画をどうやって実務に落としていくかが成否の分かれ目になります。そのためにはNAGASEグループの全社員がビジョンを自分自身のテーマとして具体的に落とし込み、実現するために軌道修正をしながらPDCAを回していく必要があります。私も経験がありますが、会社がどれだけ理想的なビジョンを描いても、現場の社員に響いていない会社が結構多い。そうならないために、社員一人ひとりが自分ごととして「ACE 2.0」で掲げたビジョンの達成に取り組む姿勢を浸透させていってほしいと思います。

「ACE 2.0」で目指す“持続可能な事業”(N-Sustainable事業)の創出について、期待されている部分や重要だと思われる点をお聞かせください。

野々宮

伊地知さんがおっしゃったように、社員一人ひとりが自分ごととして、自分は今、何をすればいいのか、どこを目指しているのかを、会社への貢献という具体的な形に落とし込んでほしいと思います。約190年にわたってサステナビリティを実践してきたNAGASEグループの、自らが「変わる」ことに対する前向きな企業文化は、持続可能な事業を創出する上での原動力になるはずです。N-Sustainable事業が次の100年、200年、その先を担う事業に成長することを期待しています。

伊地知

N-Sustainable事業の定義である「顧客、社会が未だ認識していない課題を見つけ出し、『利益を生み出す解決策』を提供する」というのは、とても難しいことのように思えますが、基本はお客様の切実なニーズは何かというシンプルな課題を、真摯に、そして謙虚に突き詰めていくことでしかないのだと思います。そのために大事なことは、会社全体が官僚主義に陥らないよう、部門間の人事交流も含め、組織風土改革の風を呼び起こす努力を常に怠らないことだと思います。

家守

「ACE 2.0」で掲げた「質の追求」というテーマに対し、N-Sustainable事業が果たす役割はとても大きいと思います。デジタル技術を活用して、従来のビジネスモデル、従来の組織、考え方を変え、新たな付加価値を創出していくという試みは、NAGASEグループならではのDXであるといえます。従来型の商社ビジネスに代わり、今後は情報を解析し、ソリューションを提供するための手段を多様化させることが重要になります。N-Sustainable事業では、営業・製造・研究が三位一体とならなければ「顧客が未だ認識していない課題」を見つけることはできません。3つのうち少なくとも2つができる人財を育成し、相手先の課題とそれに対するソリューションを見つけ出せる能力を持った集団にしていく必要があります。そしてその次に、自分たちが提示したソリューションにどう関わり、ビジネスとして成長させていくのか。N-Sustainable事業については、その実現性も含めて期待しています。

Profile

社外取締役 家守 伸正

住友金属鉱山で役員を歴任し、企業経営に関する高い見識を有する。2016年より当社取締役。

社外取締役 伊地知 隆彦

トヨタ自動車で長年にわたり経理財務や人事労務に携わる。2020年に当社取締役に就任。

社外取締役 野々宮 律子

米国でキャリアを積み、M&Aアドバイザリーを専門とする。2020年に当社取締役に就任。

統合報告書2021

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  • NAGASEグループの価値創造ストーリー(2.2MB)

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  • Shaping Value “質”の追求(1.8MB)

    CEO Message/トップメッセージ | CFO Message/管理担当取締役メッセージ | 未来を見据えたビジネスモデルの進化 | Shaping Value 1 収益構造の変革 | Shaping Value 2 企業風土の変革 | Shaping Value 3 変革を支えるコーポレート機能

  • 事業ポートフォリオ(2.7MB)

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