特集 未来を見据えた新たなビジネス

NAGASEバイオテック室

グループの要素技術を集約し環境に配慮した持続可能な事業を創出

今、環境配慮の観点からバイオ関連のビジネスが注目されています。NAGASEグループではグループ各社のバイオ技術を結集し、時代が求めるサステナブルな新規素材の開発に取り組んでいます。この取り組みを推進するグループ横断組織として、2021年4月に「NAGASEバイオテック室」を新たに設立しました。

NAGASEグループには、微生物、発酵生産物、酵素・酵素反応物の研究開発と生産に関する多様な要素技術があります。これまでは、ナガセR&Dセンター(長瀬産業)、ナガセケムテックス(株)、(株)林原のそれぞれが個別に技術の開発に取り組んできました。しかしながら、この状況ではそれぞれが持つ技術にどうしても縛られ、飛躍的な発展につながりにくいという課題がありました。

これらのバイオ技術をグループとして結集できれば、他社にはないNAGASEの新たな技術価値を提供し、顧客やパートナーのニーズに応える新規素材開発に向けて力強く歩み出せるのではないか。この考え方をもとに、ナガセR&Dセンター、ナガセケムテックス(株)、(株)林原の3社からメンバーが集まり、NAGASEバイオテック室がスタートしました。

NAGASEバイオテック室 統括
白坂 直輝

バイオ技術を組み合わせ、他にはない技術価値を提供

NAGASEグループのバイオ技術は、発酵生産物と酵素・酵素反応物などバイオ技術による多様なソリューションを提供できるところが他社にはないユニークな特徴です。NAGASEバイオテック室には、こうしたグループの要素技術を集約して新たな素材の開発テーマを創出し、そのテーマを事業化するためにグループ横断で事業構想を立案していくという、2つのミッションが与えられています。

分野としては、従来の3社が主にターゲットとしていた食品素材をはじめ、健康食品、化粧品、医薬・医療といったより高付加価値の新素材にも展開していきます。更に、今後はケミカル・エレクトロニクス分野においても、より付加価値の高いサステナブルな新素材の提案を目指していきます。

技術の面では「NAGASE Integration Technology(NIT)」という戦略を打ち出します。3社が有するバイオ技術の強みを「スクリーニング」「改良技術」「発酵・酵素反応技術」「評価・分析技術」の4つの枠組みで分析し、それをもとに技術の選定や統合を行うことで、NAGASEならではの新たなバイオ技術を開発します。また、バイオとデジタルのシナジーが高いことから、NAGASEが2020年11月よりサービス提供を開始した、AIを活用した新素材探索プラットフォーム「TABRASA™」との連携を通じて、新素材の価値や可能性を市場に提供していきます。

既に具体的な開発テーマと事業化に向けた動きが始まっています。環境・社会課題の解決や顧客のニーズにつながる価値をNAGASEのバイオで生み出すため、更に加速していきます。

TABRASA™

企業のMIのサポートを通じ、日本の素材・化学産業の持続的発展に貢献

NAGASEグループでは、AIの活用で新規材料の開発を変革するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)のプラットフォーム「TABRASA™」をIBM社と共同開発し、2020年11月、SaaSサービスとして外部への提供を開始しました。

社会環境が急速に変化する中で、材料開発に求められる機能とスピードも年々上がり、難易度が増しています。MIはこれまで欧米を中心に進んでおり、日本企業の取り組みは遅れています。とりわけ中堅企業ではようやく投資が始まる段階で、それもコストや専門人財などの面から高いハードルを越えなければならないのが現実です。

「TABRASA™」を自社での活用にとどめず、他社にもサービスとして提供した背景には、多岐にわたる業界の顧客ネットワークを持つNAGASEが中堅企業のMIをサポートすることで、日本の素材・化学産業の持続的発展に貢献したいとの想いがあります。同時に、ソリューションプロバイダーとしてのNAGASEの地位向上にも効果を期待できると考えています。

マテリアルズインフォマティクス推進チーム
プロジェクトリーダー・NVC室 森下 夏希

研究開発の価値創造を支援するプラットフォームを目指す

「TABRASA™」の特徴はアナリティクス・アプローチとコグニティブ・アプローチという2つのエンジンがあることです。一般的なMIとは、一定量のデータをもとに機械学習を行い物性や分子構造を予測するアプローチで、これは「TABRASA™」ではアナリティクス・アプローチに該当します。これを行うためには前提として大量のデータを用意し、入力しなければなりません。一方、コグニティブ・アプローチはAIが論文などからデータを読み取り、それを構造化して新しい知識を出力する手法で、データ準備の手間を省力化できます。アナリティクスだけでなくコグニティブのエンジンも搭載している点が、他にはない「TABRASA™」の強みです。

MIを実施して得られた素材探索の結果については、もちろんお客様が自由に活用できます。現在、既に100社以上の顧客からの反響があり、今後も順次新しい機能を盛り込んでいく計画です。将来的には、価値の源泉となるデータやリソースが取引されるマッチングの場の提供など、様々な課題を解決するMIプラットフォームを目指しています(下図)。

「TABRASA™」を利用することで、材料開発における研究開発のあり方が大きく変わります。開発の効率化が進むのはもちろんのこと、創造性や革新性の向上も実現し、イノベーション全体が加速されるでしょう。イノベーションの加速が社会の課題解決に大きな影響を与えていく未来像を、NAGASEグループは思い描いています。

統合報告書2021

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分割ダウンロード

  • 編集方針・目次(345KB)

  • NAGASEグループの価値創造ストーリー(2.2MB)

    NAGASEグループの価値創造ストーリー全体像 | NAGASEグループの社会的な存在意義 | 価値創造の歴史 | NAGASEグループのビジネスモデル | 重要な経営資源 | NAGASEグループが直面するリスクと機会 | 特集 未来を見据えた新たなビジネス | NAGASEグループが取り組むサステナビリティ経営

  • Shaping Value “質”の追求(1.8MB)

    CEO Message/トップメッセージ | CFO Message/管理担当取締役メッセージ | 未来を見据えたビジネスモデルの進化 | Shaping Value 1 収益構造の変革 | Shaping Value 2 企業風土の変革 | Shaping Value 3 変革を支えるコーポレート機能

  • 事業ポートフォリオ(2.7MB)

    事業一覧 | 機能素材セグメント | 加工材料セグメント | 電子・エネルギーセグメント | モビリティセグメント | 生活関連セグメント | 地域別戦略

  • サステナビリティ経営(1.7MB)

    Our Board/役員紹介 | コーポレート・ガバナンス | 社外取締役インタビュー | コンプライアンス | リスクマネジメント、責任ある宣伝とマーケティング | 変革を推進する人財の強化 | 環境価値の創出 | 人権・労働、働きやすい職場環境づくり、責任あるサプライチェーン | 社会貢献活動

  • データ・セクション(667KB)

    11年間の主要財務データ | MD&A | 主なグループ会社・事業所一覧 | 株式情報 | 会社情報